AI制作の外注で失敗する最大の要因は、「素材の量産」と「コンセプト制作」を同じ土俵で比較してしまうことです。前者は点数単価、後者は案件一式。買っているものが違うので、比較の物差しも変えてください。
この記事でわかること
- AI制作の依頼が3タイプに分かれること、それぞれ買っているものの違い
- タイプ別の費用相場と、見積もりを比較するときの揃え方
- 発注書に必ず書く8項目(うち3つはAI制作特有)
- 権利と修正回数の決め方
- 初めて依頼するときの進め方
依頼は3タイプに分かれる.

この3つを分けずに「AIで安く作ってほしい」と依頼すると、話が噛み合いません。とくにコンセプト制作を素材量産の単価で比較すると、ほぼ確実に作り直しになります。
依頼する側が最初にやるべきことは、自分がどのタイプを買おうとしているのかを決めることです。決まっていれば、見積もりの読み方も、比較する相手も自然に定まります。
費用相場の見方.
| 依頼タイプ | 見積もりの単位 | 費用の目安 | 揃えるべき条件 |
|---|---|---|---|
| 素材の量産(バナー・SNS) | 1点あたり | 数千円〜数万円 | サイズ展開の本数、修正回数、納品形式 |
| 商品画像の加工・背景生成 | 1点あたり | 数百円〜数千円 | 切り抜き精度、色合わせの有無、基準カットの提供 |
| キービジュアル・コンセプト制作 | 案件一式 | 十数万円〜数十万円 | 提案案数、権利の範囲、二次利用の可否 |
| 短尺動画(SNS向け) | 1本あたり | 数万円〜二十数万円 | 尺、素材提供の有無、ナレーション、字幕 |
| ブランドムービー | 案件一式 | 数十万円〜 | 撮影の有無、出演者、音楽の権利処理 |
| 仕組みづくり・研修 | 期間・体制 | 月額で契約することが多い | 納品ドキュメントの定義、対象人数、期間 |
相場は目安です。比較するときは金額だけでなく「修正は何回まで含まれるか」「元データを受け取れるか」「二次利用はどこまで可能か」を必ず揃えてください。この3つが揃っていない見積もりの比較は、意味を持ちません。
発注書に必ず書く8項目.

AI特有の3項目
従来の発注書にはなかったのが、次の3つです。
- AI利用の開示:どの工程で、どのツールを使ったか。「使うな」と書くより「使ったら報告する」と書くほうが、実際に守られます
- 生成ログの引き渡し:プロンプト、シード値、参照画像、レイヤー分けされた元データ。これがないと、後の展開が毎回外注になります
- 類似チェックの実施と記録:第三者の権利を侵害しないことの保証に加えて、確認した記録の提出を条件にします
権利は二段構えで書く
AIが自動生成しただけの表現は、原則として著作物にあたらないと整理されています。つまり「著作権を譲渡する」と書いても、譲渡すべき著作権が存在しない可能性があるということです。そこで実務では、次の2つを併記します。
- 著作権が発生する場合は、発注者に譲渡する
- 発生しない場合でも、発注者が独占的に利用でき、受注者は第三者に同一・類似の成果物を提供しない
第◯条(生成AIの利用) 1. 受注者は、本件業務において生成AIを利用する場合、その工程、使用したサービス名およびモデル名を、 納品時に書面で発注者に報告する。 2. 受注者は、生成に用いたプロンプト、参照画像その他の入力情報および編集可能な元データを、 成果物とあわせて発注者に引き渡す。 3. 受注者は、成果物が第三者の著作権その他の権利を侵害しないことを保証し、 公開前に類似性の確認を行い、その記録を発注者に提出する。 4. 成果物に著作権が発生する場合、当該著作権(著作権法第27条および第28条の権利を含む)は 検収完了時に発注者へ移転する。著作権が発生しない場合においても、受注者は発注者に対し 成果物を独占的に利用する権利を許諾し、第三者に同一または類似の成果物を提供しない。
初めて依頼するときの進め方.
小さく1件だけ出す
いきなり全案件を任せない。1件だけ出して、進め方・コミュニケーション・納品物の粒度を確認します。
参考イメージを3枚用意する
言葉だけで伝えるとブレます。「こうしたい」2枚と「こうはしたくない」1枚を出すと、初回の精度が大きく上がります。
使ってほしくない表現を先に伝える
特定の作品に似た画風、実在の人物に似た人物、競合を想起させる配色。禁止事項は最初に渡します。
修正の回数と範囲を決める
「ラフ段階で2回、仕上げで1回」のように、段階ごとに決めます。段階を分けないと無限になります。
検収基準を合意する
何をもって完了とするか。データ形式、解像度、命名規則まで含めて、先に文字にしておきます。
発注前チェックリスト
Checklist- 依頼のタイプ(量産/コンセプト/仕組みづくり)を決めた
- 用途・媒体・期間・二次利用の範囲を明記した
- 納品形式(形式・解像度・レイヤー・命名規則)を指定した
- 修正回数の上限と、段階ごとの範囲を決めた
- 権利の取り扱いを二段構え(譲渡+独占許諾)で記載した
- AI利用の開示と、生成ログの引き渡しを条件にした
- 類似チェックの実施と記録の提出を求めた
- 検収の基準を文書で合意した
よくある質問.
QAIを使うクリエイターに頼むと、安くなりますか?
QAIを使わないでほしいと指定できますか?
Q納品物の著作権は自社のものになりますか?
Q見積もりを比較するとき、何を揃えればよいですか?
Q社内でAI制作を回せるようにしたい場合、何を依頼すればよいですか?
まとめ|「何を買うのか」を決めてから発注する.
- 依頼は素材の量産/コンセプト制作/仕組みづくりの3タイプ。買っているものが違う
- 見積もりは修正回数・元データ・二次利用の3条件を揃えてから比較する
- 発注書にはAI特有の開示義務・生成ログの引き渡し・類似チェックの記録を足す
- 権利は譲渡と独占許諾の二段構えで書く
- 初回は小さく1件出して、進め方と納品物の粒度を確認する
※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年9月時点の情報です。
依頼の整理から見積もりの読み解きまで、発注側の立場でご相談いただけます.



