MAGAZINE/HowTo/image-ai-prompt-copyright
HowTo

画像生成AIのプロンプトと著作権|NG例と安全な書き方

2026.10.01
SAC(Smart AI Collective)編集部READ 5 MIN2026.10.01

この記事の要約

「〇〇風」は使ってよいのか。プロンプトの書き方が著作権侵害の判断にどう影響するかを、NG例と書き換え例で解説します。

画像生成AIを業務で使いはじめると、必ず出てくるのが「このプロンプトは書いても大丈夫なのか」という質問です。結論から言うと、プロンプトそのものが著作権を侵害することはほとんどありません。問題になるのは、そのプロンプトが侵害の判断材料として使われることです。この記事では、その仕組みと、明日から書き換えられる具体的な言い換えを整理します。
結論

プロンプトは「出力を作る道具」であると同時に「どこを参照したかの記録」でもあります。固有名詞を書いた瞬間、参照したことを自分で書き残したことになります。ここが実務上の分かれ目です。

前提|侵害かどうかを決めるのは2つの条件.

著作権侵害が成立するかどうかは、類似性と依拠性という2つの条件がそろうかで判断されます。日本では、生成AIについても既存の著作権法の枠組みで判断するという整理がなされています。

重要なのは、著作権が守るのは具体的な表現であって、アイデアや作風そのものではないという点です。「油絵風」「サイバーパンク」「水彩タッチ」といった方向性が同じであることは、それだけでは侵害になりません。

一方で、生成AIで難しいのが依拠性です。利用者本人が元の作品を知らなかったとしても、学習データに含まれていたことを理由に依拠性が推認されうると整理されており、「知りませんでした」が通りにくい構造になっています。

侵害の判断は類似性と依拠性の2軸。プロンプトは依拠性の側に効いてくる
侵害の判断は類似性と依拠性の2軸。プロンプトは依拠性の側に効いてくる

だからプロンプトの書き方が効いてくる.

ここまでを踏まえると、プロンプトに関する実務上のルールは1つに集約できます。

固有名詞を書かない

作品名・作家名・キャラクター名・ブランド名。これらをプロンプトに書くと、その作品を参照して作ったという記録を自分で残すことになります。出力が偶然似てしまった場合と、参照して似せた場合とでは、説明の難易度がまったく違います。

「〇〇風」はどこまで許されるのか

作風そのものは著作権の保護対象ではない、というのが一般的な整理です。したがって「〇〇風」という指示が直ちに違法になるわけではありません。しかし実務では、次の2つの理由で避けるべきです。

  • その作家の特徴的な具体的表現まで再現されてしまうと、類似性の側で問題になる
  • プロンプトに名前が残ることで、依拠性を争う余地が小さくなる

加えて、存命の作家や現役のブランドを名指しした生成は、法的な評価とは別に、レピュテーションの問題を引き起こします。広告や商品に使うなら、ここは避ける一択です。

固有名詞を消すのではなく、狙っていた要素に分解して書き直す
固有名詞を消すのではなく、狙っていた要素に分解して書き直す

書き換えの実例|狙いを要素に分解する.

「作家名を使うな」と言われて困るのは、その名前が複数の要素の束を一語で表していたからです。だから、束をほどいて書き直します。

NG例|そのまま出すと危ない書き方
『(有名アニメ作品名)』風の背景美術で、少女が電車の窓から街を見ている。
(著名イラストレーター名)のタッチ。
作品名と作家名の両方が入っており、参照したことを自分で記録してしまっています。
OK例|要素に分解した書き方
夕方の郊外電車の車内から見た街並み。
スタイル:1990年代の日本のセルアニメ調。主線は太め、影は2階調、彩度低め、わずかな粒状感。
構図:窓枠を手前に置いた三分割構図、視点は座席の高さ。
光:斜光、オレンジからマゼンタへのグラデーション、窓に反射。
人物:架空の10代後半の人物、後ろ姿、顔は特定できない。
狙っていた「あの感じ」を、様式・構図・光・人物という一般名詞に分解しています。再現性も上がるため、結果的にディレクションしやすくなります。
禁止ワードは4分類で覚え、代替表現とセットで配る
禁止ワードは4分類で覚え、代替表現とセットで配る

禁止ワードは「具体的な語のリスト」で配るとすぐ陳腐化します。4つの分類で覚えてもらうほうが、現場で判断できるようになります。

分類は、作品名/作家名/キャラクター名・実在人物名/ブランド名・商品名の4つ。そして「代わりに何を書くか」をセットで示すことが重要です。禁止だけを配ると、現場は手が止まるか、こっそり使うかのどちらかになります。

✦

プロンプト以外で、必ずやっておく3つのこと.

01

生成ログを残す

日時・ツール名・モデル・プロンプト・生成枚数を記録します。依拠性がないことの説明材料になり、社内監査でも役立ちます。スプレッドシート1枚で十分です。

02

公開前に類似チェックをする

逆画像検索と画像検索で、既存の作品や実在の人物に似すぎているものがないかを確認します。制作者本人ではなく、別の担当者の目を通すのがポイントです。

03

加工・再構成の工程を挟む

生成そのままではなく、レイアウト、文字組み、トリミング、合成といった人の手を加えます。表現としての独自性が上がるだけでなく、創作的寄与の説明もしやすくなります。

i

「AIに考えさせる」のではなく「AIに手を動かさせる」と捉えると、プロンプトは自然に安全側へ寄ります。何を作りたいかを自分の言葉で決められていれば、他人の作品名を借りる必要がそもそもありません。

プロンプトを書く前のセルフチェック

Checklist
  • 作品名・シリーズ名を入れていない
  • 作家名・アーティスト名を入れていない
  • キャラクター名・実在の人物名を入れていない
  • ブランド名・商品名・ロゴの指示を入れていない
  • 「〇〇風」の代わりに、様式・構図・光・技法で指定できている
  • 生成ログ(日時・ツール・プロンプト)を保存する準備ができている
  • 公開前に第三者の目で類似チェックをする段取りがある

よくある質問.

Qプロンプト自体に著作権は発生しますか?
A工夫を凝らした長文のプロンプトには、言語の著作物として保護される余地がありうると考えられます。ただし短い指示や一般的な語の組み合わせに独占権が認められる可能性は低く、実務上は「他人のプロンプトを無断で商用配布しない」という程度の配慮で足ります。
Q「〇〇風」と書かなければ、似た絵が出ても問題ありませんか?
Aプロンプトに書かなかったことは、依拠性を争う上で有利に働きますが、免罪符にはなりません。出力が既存の作品と創作的表現のレベルで似ていれば、類似性の側で問題になりえます。公開前の類似チェックは必ず行ってください。
Q社内資料で「〇〇風」を使うのもダメですか?
A社外に出ない検討用のラフであれば、リスクは相対的に低くなります。ただし、社内資料はそのまま提案書に転用されることが多いのが実態です。最初から出せる書き方で作っておくほうが、結果的に手戻りが減ります。
Q自社の過去作品を参照させるのは問題ありませんか?
A自社が権利を持つ素材であれば、参照は問題になりにくいといえます。ただし、制作会社に発注した過去作品の権利が自社に移転しているかは、契約書で確認してください。移転していない場合は、あらためて許諾が必要です。
Q生成した画像が既存の作品に似ていた場合、どうすればいいですか?
A公開前であれば使わない判断が最も確実です。すでに公開している場合は、速やかに取り下げたうえで、生成ログと制作経緯を整理し、権利者からの連絡に備えます。似ている度合いの判断は専門的になるため、早い段階で弁護士に相談してください。

まとめ|プロンプトは「記録」でもある.

  • 侵害の判断は類似性と依拠性の2条件。プロンプトは依拠性の側に効く
  • 作品名・作家名・キャラクター名・ブランド名は書かない。これが最優先ルール
  • 「〇〇風」は様式・構図・光・技法に分解して書き直す。再現性も上がる
  • 生成ログ・類似チェック・人の手による加工の3点をセットで運用する
  • 禁止ワードは4分類で覚えてもらい、代替表現とセットで配る

参考にした一次情報:文化審議会著作権分科会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日) / 文化庁「AIと著作権について」

※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年9月時点の情報です。

Let’s talk

プロンプト規程や社内ガイドラインの整備からご相談いただけます.

SACに相談する →
SAC(Smart AI Collective)編集部
Supervised by

SAC(Smart AI Collective)編集部

All Articles記事一覧をすべて見る
Let's talk

AIクリエイティブの今を
お届けします.

まずはどんな事を考えているのかお聞かせください。

お問い合わせ →