この記事でわかること
- AI動画に著作権侵害リスクが生じる仕組み(学習段階と生成・利用段階/類似性・依拠性)
- 【2026年最新】令和5年(2023)改正・2024年1月施行の要点と、直近の国内事例
- 侵害を回避する具体的な制作プロセス(プロンプト・逆画像チェック・ツール選定)
- 契約で押さえる条項と、AI生成物を“自社資産”として守る考え方
AI動画にも著作権侵害リスクは存在します。ただし、侵害が成立する“仕組み”を理解し、正しい制作プロセスを踏めば回避できます。
本記事では、弁護士監修のもと、侵害が問題になる仕組み・2026年最新の法制度と事例・侵害を防ぐ実務手順までを、一次情報にもとづいて体系的に解説します。

AI動画制作で著作権侵害が起こる仕組み.
まず、AI動画のどこに著作権リスクが生じるのかを整理します。文化庁は、生成AIと著作権の問題を「学習段階」と「生成・利用段階」の2つに分けて考える枠組みを示しています。この地図を持つことで、リスクの所在と回避策が明確になります。
そもそもAI動画に著作権リスクはあるのか
「AIが自動生成したものだから、誰の権利も侵害しない」というのは誤解です。生成された映像が既存の著作物(キャラクター・イラスト・映像表現など)と似ていれば、著作権侵害と判断される可能性があります。制作者が特定の作品を意識していなくても、結果として表現が酷似すれば問題になり得る——これがAI動画特有の難しさです。
一方で、人間の創作的な関与があればAI生成物にも著作権が発生し得るため、AI動画は「他者の権利を侵害しないか」と「自社の制作物をどう守るか」の両面で考える必要があります。
一次情報の要約
文化庁の考え方では、生成AIと著作権の問題は、AIに著作物を学習させる「開発・学習段階」(著作権法30条の4の適用が論点)と、AIで生成物を作り使う「生成・利用段階」(依拠性・類似性が論点)の2段階に分けて検討するとされている。
侵害を判断する2つの要件|類似性と依拠性
生成・利用段階での著作権侵害は、次の2要件を両方満たすかで判断されます。
| 要件 | 意味 |
|---|---|
| 類似性 | 生成物の表現が、既存の著作物と本質的な特徴において同一・類似していること |
| 依拠性 | 既存の著作物に「基づいて」作られたこと(偶然の一致だけでは侵害にならない) |
鍵は依拠性です。AIの場合、学習データに既存の著作物が含まれていれば、その影響を受けて生成された可能性があるため、依拠性が肯定されやすいと考えられています。「必ず侵害になる」わけではありませんが、リスクを軽視できない理由がここにあります。

AI特有のリスク|学習データと「意図せぬ類似」
制作者が特定の作品をまねるつもりがなくても、学習データの影響で、既存のキャラクターや作風に酷似した映像が生成されることがあります。これが「意図せぬ類似」です。AI動画では「作ってから似ていることに気づく」ケースが起こり得るため、後述する生成後のチェック工程が欠かせません。
【2026年最新】知っておくべき法制度と国内事例.
次に、制作担当者が押さえるべき最新の法制度と、直近の国内事例を、出典とともに正確に整理します。
令和5年(2023)改正・2024年1月施行の要点
著作権法は令和5年(2023)に改正され、損害賠償額の算定方法の見直しなどが令和6年(2024年)1月1日に施行されました。(「2024年著作権法改正」という表記は不正確なため用いません。)権利者が損害を立証しやすくなる方向の見直しであり、侵害時のリスクを実務として軽視できないことを意味します。
一次情報の要約
令和5年改正では、海賊版被害等の実効的救済のため、権利者の販売能力を超える部分に係るライセンス料相当額を賠償額に加えられるようにするなど、損害賠償額の算定方法が見直された。施行日は令和6年1月1日。
【全国初】千葉県警のAI生成画像 書類送検(2025年)
2025年11月、AI生成物の著作権をめぐる注目すべき事例が報じられました。読み物としても、この記事の“旬”を示す重要な一次情報です。
一次情報の要約
2025年11月20日、千葉県警は、生成AIで作られた画像を無断で複製し電子書籍の表紙に使用したとして、男性を著作権法違反(複製権侵害)の疑いで書類送検した。AIで作られた画像に著作権があるとして同法違反で摘発するのは全国で初めてとみられる、と報じられている。
炎上・レピュテーションのリスク
法的な侵害認定に至らなくても、企業の評判を損なうリスクは現実に存在します。
一次情報の要約
2024年、海上保安庁は、海難事故の防止を呼びかけるリーフレットに、職員が生成AIで作成したアニメ風の女性イラストを使用し、公式サイトやSNSで公開しました。これに対して、SNS上では生成AIの利用や著作権をめぐる批判が広がりました。海上保安庁は公式サイトから掲載を削除し、予定していた5万部の配布も中止しています。同庁は、著作権法違反と判断したわけではないものの、侵害のおそれを否定できないとして利用を中止したと説明しています。この事例は司法によって著作権侵害が認定されたものではなく、生成AIの利用に伴う社会的反発やレピュテーションリスクが、公開・配布中止につながった例として捉える必要があります。
出典:海上保安庁、AIイラストを使ったリーフレットを配布中止。SNSの反響などを受けて/海保が生成AIでイラスト作成のパンフレットに批判集まり配布を中止 著作権法の改正求める声も
著作権以外のリスク|肖像権・ステマ規制
AI動画に人物が登場する場合は肖像権・パブリシティ権、AIタレントを広告に起用する場合はステルスマーケティング規制(景品表示法)にも配慮が必要です。著作権だけを見ていると足元をすくわれます。
関連記事:AIモデル 肖像権 広告
関連記事:AIタレント 広告 ステルスマーケティング
AI動画の著作権侵害を回避する制作プロセス.
ここからは実務編です。侵害を未然に防ぐために、企画から納品までの各段階で何をすべきかを解説します。文化庁のチェックリスト&ガイダンスも、リスク低減の取り組みを推奨しています。
企画・プロンプト段階のNGと回避策
侵害リスクはプロンプト(指示文)の段階から始まります。次のような指定は避けてください。
| NGなプロンプト例 | 安全な言い換え例 |
|---|---|
| 「〇〇(特定作家)風のイラストで」 | 「水彩タッチのやわらかい印象で」 |
| 「(特定キャラ名)のようなキャラクター」 | 「丸みのある親しみやすいマスコット」 |
| 「(特定作品名)のワンシーン風に」 | 「夕暮れの街を歩く後ろ姿の構図で」 |
特定の作家名・作品名・キャラクター名を指定せず、色調・構図・雰囲気といった抽象表現に置き換えるのが基本です。

制作・チェック段階|逆画像検索と類似チェック
生成後は、公開前に必ず類似チェックを行います。
生成した映像・キーカットを逆画像検索にかける
既存の有名キャラクター・ブランドロゴ・作風に酷似していないか目視で確認する
使用したプロンプト・生成日時・チェック結果を記録(ログ)として残す
チェック記録は、万一問題を指摘された際に「既存作品に依拠していない」ことを説明する材料になります。プロセスを可視化しておくことがリスク管理につながります。

ツール選定|商用利用・ライセンス・IP補償の確認
使用するAIツールの規約とライセンスも、侵害リスクを左右します。次の観点で選定しましょう。
| 確認項目 | チェックのポイント |
|---|---|
| 商用利用 | 生成物を商用・広告で使ってよいか(プラン・ベータ版で条件が異なる場合あり) |
| 学習データ | 学習データの適法性・出所が説明されているか(許諾済み素材・パブリックドメイン等) |
| IP補償 | 第三者から権利主張を受けた際の補償の有無と、その“条件” |
一次情報の要約
Adobe Fireflyは、許諾済みのAdobe Stock素材やパブリックドメイン等で学習し、エンタープライズ版の契約者に対しては、出力が第三者のIPを侵害したと主張された際の補償(法的費用の補償)を用意している。ただし補償には除外条件があり、生成画像をユーザーが改変した部分、他の素材と組み合わせて生じた問題、ユーザー独自データでのカスタム学習からの出力、ベータ版機能の出力などは対象外とされる。
出典:生成画像で知財トラブルあればアドビが補償 画像生成AI「Adobe Firefly」にエンタープライズ版|ITmedia NEWS
契約・権利処理と、AI生成物を“資産”として守る視点.
AI動画を外注・納品する場面では、契約で権利関係を明確にしておくことがトラブルを防ぎます。同時に、自社が作ったAI動画を“資産”として守る視点も重要です。
制作委託契約で定める3つの必須条項
著作権の帰属と移転のタイミング(誰に・いつ権利が移るか)
著作者人格権の不行使に関する取り決め
使用ツール・プロンプト・生成過程の開示や、権利侵害がないことの表明保証
関連記事:生成AI 業務委託 契約書 ひな形
AI生成物にも著作権が発生し得る(自社資産を守る)
AIを使って制作した場合でも、人間による創作的な寄与(構成・演出・選択・加筆など)が認められれば、その成果物に著作権が発生し得ると考えられています。前述の千葉県警の事例は、AI生成物が“著作物として保護され得る”ことを示す文脈で参照できます。企画・演出・編集などの関与を記録しておくと、自社の権利を主張しやすくなります。
内製の限界と、プロのディレクションという選択.
ここまでの回避策は、自社だけで運用しようとすると相応の負担がかかります。リスクを確実に管理するうえで、外部の専門的なディレクションを活用するのも合理的な選択です。
内製で侵害リスクを管理し切れない3つの理由
工数:最新の法改正・行政の考え方を継続的にキャッチアップし続ける負担が大きい
品質:類似チェックや記録運用には専門知識が必要で、属人化・見落としが起きやすい
権利リスク:ツール規約やIP補償の“条件”を読み解き、適切に選定・運用するのは容易ではない
SACの適法・安全なAI動画制作プロセス
SAC (SMART AI CREATIVE) by EPOCH は、プロのディレクションのもとで、参照回避を意識したプロンプト設計・逆画像チェック・権利がクリーンなツール運用・記録の保存までを標準プロセスとして提供します。EPOCHが培ったクリエイティブディレクションと、法務に配慮した制作フローを組み合わせ、「安全性」と「品質」を両立させます。
意図せぬ侵害を防ぐAI動画制作は、SAC (SMART AI CREATIVE) by EPOCH へ.
よくある質問.
QAIが自動生成した動画でも著作権侵害になりますか?
Q学習データに何が含まれているか分からない場合は?
Q社内利用(非公開)なら著作権は気にしなくてよい?
QIP補償のあるツールを使えば安心ですか?
Q AIで作った動画は自社の著作物として守れますか?
まとめ|リスクは正しく管理すれば回避できる.
AI動画の著作権は「学習段階(30条の4)」と「生成・利用段階(類似性・依拠性)」に分けて考える
AIは学習データの影響で依拠性が肯定されやすく、生成後の類似チェックが不可欠
令和5年(2023)改正・2024年1月施行、そして2025年の全国初の書類送検で、リスクは現実になった
プロンプト設計・逆画像チェック・記録・ツール選定というプロセスで回避できる
人間の創作的関与があれば、AI生成物は自社の資産として守り得る
侵害リスクは、正しい知識とプロセスがあれば管理できます。とはいえ、最新の法対応と品質を自社だけで維持し続けるのは簡単ではありません。安全に、かつ高品質にAI動画を制作したい場合は、専門のディレクションを活用するのが近道です。
安全・高品質なAI動画制作は SAC (SMART AI CREATIVE) by EPOCH へ.



