この記事でわかること
- 漫画広告をAIで作る5工程(構成・ネーム→キャラ固定→コマ生成→写植→表現チェック)
- 登場人物の見た目をコマ間でそろえる方法
- ネーム作成とコマ生成に使えるプロンプトの型
- 体験談・使用前後の描写について、消費者庁・厚生労働省が示している考え方
- 入稿前に確認する8項目
AI漫画広告で人が手放してはいけないのは、構成と表現の判断です。AIはコマの作画に使い、セリフの文字は人が入れる。描く効果は根拠資料の範囲にとどめ、体験談を「個人の感想です」の注記で打ち消せるとは考えない。この2点を最初に決めておくと、量産しても審査や表示のトラブルで止まりにくくなります。
漫画広告の種類と、AIが向いている部分.
漫画広告には、大きく2つの形があります。
- 縦読み漫画LP:広告をクリックした先のページ全体を漫画で構成するもの。数十コマで、悩み→出会い→納得→購入までを描きます
- SNS広告用の漫画:フィードに表示される数コマ〜十数コマの漫画。冒頭の1〜2コマで続きを読みたくなるかが勝負です
AIが力を発揮するのは、コマの作画と、構成案のたたき台づくりです。同じストーリーで登場人物の年代や職業を変えた版を作る、冒頭のコマだけを差し替えて反応を比べる、といった展開もしやすくなります。一方、何を描いてよいかの判断と、セリフの文字入れは人が担う工程として残しておくのが現実的です。

工程1|構成とネームを作る.
ネームは、コマ割り・構図・セリフを簡単に描いた漫画の設計図です。広告の場合は、ストーリーより先に読み終えた人に何をしてほしいか(購入、資料請求、アプリのダウンロードなど)を決め、そこから逆算して構成します。
よく使われる構成の流れ
- 共感:ターゲットが抱えている状況を描く
- きっかけ:商品やサービスと出会う
- 納得:なぜ良いのかを、根拠のある事実で説明する
- 行動:申し込み方法や条件を、分かりやすく示す
注意したいのは、3番目の「納得」です。漫画ではここで劇的な変化を描きたくなりますが、描いた変化はそのまま「広告で示した効果」として受け取られます。ネームの段階で、描写の一つひとつに根拠資料を対応させておくと、後工程での手戻りが減ります。
あなたは広告漫画の構成作家です。次の条件で、縦読み漫画LPのネームを文章で作ってください。 【商品・サービス】(名称と、言える事実だけを箇条書き。効果は根拠資料のある範囲だけ) 【ターゲット】(例:共働きで子育て中の30代。平日の夕食づくりに時間がかからない方法を探している) 【読み終えた人にしてほしいこと】(例:初回セットの申し込み) 【使えない表現】(例:「絶対」「No.1」、使用前後の極端な比較、病気が治るような表現) 出力形式:表で「コマ番号|場面|登場人物と表情|セリフ|ナレーション|この描写の根拠(資料名)」 条件:全体で24コマ以内。最初の2コマで状況が伝わるようにする。根拠のない描写には「根拠なし」と明記する。
工程2〜3|キャラクターを固定し、コマを生成する.
工程2:キャラクターの見た目を固定する
漫画広告で読者が違和感を覚えやすいのが、コマごとに主人公の顔や服が変わることです。文章だけで毎回同じ人物を描かせるのは難しいため、最初に設定画(正面・斜め・全身、表情差分)を作り、それを参照画像として全コマで使います。
- Midjourneyは、画像で人物や物を参照する「Omni Reference」を2025年5月に公開しています(Midjourney公式のお知らせ)
- Googleは、2025年8月に発表したGemini 2.5 Flash Imageで、複数のプロンプトや編集をまたいで同じキャラクターの見た目を保てることを特徴に挙げています(Google Developers Blog)
設定画の作り方や同一性の保ち方はAIキャラクターの作り方の記事で詳しく解説しています。また、既存の漫画やアニメのキャラクターに似せることは避けてください。権利面の考え方はAIキャラクターと著作権の記事が参考になります。
工程3:コマを生成する
ネームが固まったら、1コマずつ生成します。ページ全体を一度に描かせると、コマ割りや人物の位置が崩れやすくなります(編集部の経験則)。1コマ=1回の生成を基本にし、レイアウトは人が組み立てます。
縦読み漫画LPは、掲載するLPの横幅に合わせた縦長の画像として書き出すのが一般的です。推奨サイズは掲載先のサイトやツールによって違うため、制作前に確認してください。
参照画像の人物(主人公)を描いてください。顔・髪型・服装は参照画像のまま。 コマ:ネームの5コマ目。主人公が台所で時計を見て、少し焦っている 構図:バストアップ、やや斜め上から。右側にフキダシを入れる余白を空ける 画風:(例:日本の漫画風、白黒+淡い1色、線は細め) 背景:一般的な家庭のキッチン。実在の商品やブランドは描かない 除外:文字、フキダシ、効果音の文字、ロゴ
商品は実物の写真を使う
漫画の中に商品を登場させるときは、パッケージや形をAIに描かせず、実物の写真や正式なパッケージ画像を合成します。漫画のタッチに合わせて加工する場合も、色・容量・形が実物と違って見えないようにしてください。
冒頭のコマを差し替えて検証する
漫画広告は、冒頭の1〜2コマで読み進めてもらえるかどうかが大きく左右されると考えられます(編集部の見立て)。AIを使うと、ストーリーの本体はそのままに、冒頭のコマだけを差し替えた版を作りやすくなります。たとえば「悩みのシーンから始める版」「結論の一言から始める版」「登場人物の年代を変えた版」を並べて配信し、反応を比べます。
このとき、変える要素は1つに絞るのが基本です。冒頭のコマと登場人物とセリフを同時に変えると、どの違いが反応に影響したのか分からなくなります。差し替えた版も、表現チェックはその都度行ってください。冒頭で強い表現を使うほど、審査や表示の問題になりやすくなります。
工程4|セリフと写植を入れる.
写植は、もともと写真植字の略で、漫画ではフキダシの中のセリフや文字を入れる作業を指します。AI漫画広告では、この工程を人が担当することで、表現の最終確認も兼ねられます。
- フォントの利用条件:広告や商用での利用が認められているフォントかを、フォントのライセンスで確認します
- スマホでの読みやすさ:縦読みでは文字が小さくなりがちです。実機で表示して確認します
- 注記の大きさと位置:条件や注意書きは、強調した表現の近くに、読める大きさで入れます。消費者庁は、打消し表示が小さかったり強調表示から離れていたりすると、内容が正しく伝わらないおそれがあると整理しています(次章で触れる留意点の資料を参照)
工程5|漫画広告の表現で注意すること.
漫画広告は、ストーリーの形をとっていても広告として表示全体で判断されます。消費者庁と厚生労働省の公表資料から、漫画で特に起きやすい論点を整理します。
1. 効果の誇張(景品表示法の優良誤認)
商品やサービスの品質などを、実際より著しく優れていると示す表示は、景品表示法の優良誤認として禁止されています(消費者庁「優良誤認とは」)。消費者庁は、効果について表示の裏付けとなる合理的な根拠資料の提出を求めることができ、提出できない場合は不当表示とみなされる仕組みがあります(同ページ)。漫画で描いた「変化」も、根拠資料で説明できる範囲にとどめる必要があります。
2. 体験談の扱い
消費者庁の「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点(実態調査報告書のまとめ)」(2018年)は、体験談について次のような考え方を示しています(消費者庁(PDF))。
- 体験談をねつ造したり、一部の都合の良い体験談だけを引用したりするなど、体験談を不適切に使うと不当表示にあたるおそれがある
- 体験談を見た消費者は「大体の人が効果を得られる」と認識し、「個人の感想です。効果には個人差があります」といった表示に気付いても、その認識はほとんど変わらないと考えられる
- 体験談を使う場合は、事業者が行った調査の被験者の数と属性、体験談と同じような効果が得られた人・得られなかった人の割合などを明瞭に表示すべきとしている
漫画のキャラクターが語る体験談であっても、消費者が表示全体から受ける印象で判断される点は同じだと考えられます(編集部の見立て)。AIで描いた架空の人物を「実際の利用者」のように見せる演出は、特に慎重に扱ってください。
3. 医薬品・化粧品などの広告(薬機法)
医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器などの広告には、医薬品医療機器等法(薬機法)がかかります。第66条は効能・効果などについての虚偽・誇大な広告を、第68条は承認・認証前の医薬品・医療機器等(医薬品・医療機器・再生医療等製品。化粧品は対象外)の名称や効能などの広告を禁じています(厚生労働省「医薬品等の広告規制について」)。
厚生労働省の「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」(2017年9月29日)は、愛用者の感謝の言葉や「私も使っています」といった使用体験談的な広告は、目薬・外皮用剤・化粧品等の使用感を説明する場合や、タレントが単に製品の説明・呈示を行う場合を除き行ってはならないとしています。また、使用前・後の図面や写真で、承認された範囲を超える効能や、効果が出るまでの時間・持続時間を保証するような表現は認められないとしています(厚生労働省(PDF))。漫画で描く「使用前後」も、こうした考え方に照らして確認が必要です。
4. 広告であることを隠さない(ステマ規制)
2023年10月1日から、広告であるのに広告と分からない表示は景品表示法の対象になっています(消費者庁)。日記風・口コミ風の漫画をSNSに流す場合は、広告であることが分かる表示を入れてください。

健康食品や美容関連の商品では、景品表示法に加えて健康増進法、食品表示法などのルールも関わります。業界団体の自主基準を設けている分野もあるため、商品カテゴリごとに確認先を整理しておくと、制作のたびに迷わずに済みます。
広告審査を通すための準備.
表示の法律とは別に、配信する媒体ごとに広告ポリシーがあります。たとえばMetaの広告規定は、減量・増量を目的とした商品やサービス、美容目的の製品や施術の広告は、配信対象を18歳以上にすることを求めており、ダイエットや健康関連の商品を宣伝するために否定的な自己認識をあおる表現を避けるよう定めています(Meta 広告規定)。媒体ごとの基準は改定されることがあるため、入稿前に最新版を確認してください。
審査で止まりにくくする段取り
ネームの段階で表現チェックを入れる
完成稿で修正すると、作画からやり直しになります。セリフと描写の根拠をネームの時点で確認し、法務・薬事の担当者がいれば、この段階で見てもらいます。
言えない表現の一覧を作る
商品カテゴリごとに、使えない言葉や描写を一覧にしてプロンプトにも入れます。AIが書いた案に混ざるのを防げます。
媒体ごとの基準を確認する
同じ漫画でも、媒体によって配信できる年齢や表現の範囲が違います。配信先が決まった時点で確認します。
差し替え用のコマを用意しておく
審査で指摘されやすいコマ(使用前後、身体の描写)には、差し替え案を用意しておくと、修正にかかる時間を短くできます。

生成AIを広告に使うときの全般的な注意点は生成AIを広告に使うときの注意点の記事、SNS広告での展開はSNS広告動画をAIで作る方法でも解説しています。
よくある質問.
QAIで描いたキャラクターが語る体験談なら、問題になりませんか?
Q「個人の感想です」と書いておけば大丈夫ですか?
Qセリフの文字もAIに描かせてよいですか?
Q漫画のタッチを、有名な漫画家の作風に似せてもよいですか?
Qどのくらいのコマ数で作ればよいですか?
まとめ|AIは作画に、判断は人に.
- 漫画広告は構成・ネーム→キャラ固定→コマ生成→写植→表現チェックの5工程で作る
- ネームでは、描写ごとに根拠資料を対応させる
- キャラクターは設定画を参照画像にして固定し、商品は実物の画像を使う
- セリフと文字は人が写植し、注記は読める大きさで強調表現の近くに置く
- 体験談は注記で打ち消せない。使うなら効果が得られた割合なども示す
参考にした公表資料:消費者庁「打消し表示に関する表示方法及び表示内容に関する留意点」 / 消費者庁「実態調査」 / 厚生労働省「医薬品等適正広告基準の解説及び留意事項等」
※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年10月時点の情報です。
漫画広告の構成づくりから、AIを使った制作フロー・表現チェックの仕組みまで支援します.
