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AIでMVを作る方法|絵コンテ・生成・リップシンク・編集

2026.11.03
SAC(Smart AI Collective)編集部READ 11 MIN2026.11.03

この記事の要約

AIでミュージックビデオを作る流れを、コンセプト、絵コンテ、画像・動画生成、リップシンク、編集の5工程で解説。国内外の公表事例と権利の注意点も整理します。

ミュージックビデオ(MV)は、楽曲の世界観を短い映像で伝える、もっとも表現の自由度が高い映像のひとつです。これまでは撮影・CG・アニメーションに大きな予算と期間が必要でしたが、生成AIの登場で、少人数・短期間でも映像を形にできるようになりました。実際に、国内外のアーティストがAIを使ったMVを公表しています。一方で、AIで作った映像は「カットごとに人物が変わる」「口の動きが歌に合わない」といった課題を抱えやすく、楽曲や映像の権利の確認も欠かせません。本記事では、AIでMVを作る流れを5つの工程に分けて解説し、使えるツールの種類、公表済みの事例、権利の注意点までまとめます。
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この記事でわかること

  • AI MVを作る5工程(コンセプト→絵コンテ→画像・動画生成→リップシンク→編集)
  • 画像生成・動画生成・リップシンク・編集の4種類のツールの役割
  • 絵コンテや動画生成で使えるプロンプトの型
  • 国内外で公表されたAI MVの事例5つ
  • 楽曲の権利、AI音楽の利用条件、YouTubeの開示ルール
結論

AI MVづくりの中心は「生成」ではなく「設計と編集」です。曲を小節単位で分解した絵コンテを先に作り、キービジュアルを画像で固めてから動画にし、歌うカットだけリップシンクを使う。この順番で進めると、カット間のぶれと手戻りを減らせます。

AI MV制作の全体像|5つの工程.

AIでMVを作るとき、多くの人が最初に動画生成ツールを触り始めます。しかし、動画生成AIが1回で作れるのは数秒〜十数秒のカットです。たとえばGoogleのGeminiアプリの動画生成は、2026年10月時点で1本あたり最大10秒と案内されています(Gemini 公式「動画生成」)。3〜4分の曲なら、数十カットをつなぐことになります。

つまり、AI MVは短いカットを大量に作り、編集で1本にまとめる制作です。どのカットをどの小節に置くかを先に決めておかないと、生成した素材がつながらず、作り直しが増えます。

生成は真ん中の一工程。前後の設計と編集が仕上がりを決める
生成は真ん中の一工程。前後の設計と編集が仕上がりを決める

工程1〜2|コンセプトと絵コンテを作る.

コンセプト:「何を見せないか」まで決める

コンセプトでは、曲の解釈、主人公の有無、時代や場所、色のトーン、カメラの距離感を決めます。AIは何でも描けるため、使わない表現(実写風かアニメ風か、人物を出すか)を決めておくと、全体の統一感が保ちやすくなります。

絵コンテ:小節とカットを対応させる

曲のテンポ(BPM)と構成(イントロ・Aメロ・サビなど)を書き出し、カットを割り当てます。1カットの長さは動画生成の上限より短くしておくと、生成した素材から使える部分を選べます。

区間小節・秒数カット内容生成方法
イントロ0:00〜0:15夜明けの海、ゆっくり寄る画像→動画(カメラの寄り)
Aメロ0:15〜0:45主人公が街を歩く、横からの追い画像→動画(人物の歩き)
サビ0:45〜1:10主人公が歌う、正面のバストアップ画像→動画+リップシンク
間奏1:10〜1:25抽象的な光の粒、色の変化文章→動画

上の表は書き方の例です。実際には、全カットを同じ形式で1枚の表にまとめ、制作の進み具合もここで管理します。

歌詞から絵コンテ案を作るプロンプト(文章生成AI向け)
あなたはミュージックビデオの監督です。次の楽曲の絵コンテ案を作ってください。

【曲の情報】テンポ:(例:BPM 92)/尺:(例:3分40秒)/構成:(イントロ、Aメロ、Bメロ、サビ…と秒数)
【歌詞】(権利者から使用の了承を得た歌詞を貼る)
【コンセプト】(例:都会で一人暮らしを始めた人の、夜明けまでの一晩。実写風、青と橙の2色)
【使わない表現】(例:アニメ調、実在の街や店の看板、有名な作品を思わせる構図)

出力形式:表で「区間|秒数|カット内容|カメラの動き|人物の有無|歌うカットか」
条件:1カットは8秒以内。サビで歌うカットは全体の2割程度にとどめる。
歌詞を入力するのは、権利者の了承がある場合に限ります。自作曲でない場合は、歌詞を貼らずに「曲のテーマ」を文章で渡しても絵コンテ案は作れます。

工程3|画像・動画を生成する.

キービジュアルを画像で固める

いきなり文章から動画を作ると、カットごとに人物や色が変わりがちです。まず画像生成で主人公と主要な場所を確定し、その画像を動画生成の最初のフレームとして使う「画像から動画」の流れにすると、ぶれを抑えやすくなります。人物を固定する考え方はAIキャラクターの作り方の記事で詳しく解説しています。

動画生成ツールの現状(2026年10月時点)

動画生成AIは提供状況の変化が速い分野です。執筆時点で公式に確認できた主な動きは次のとおりです。

  • Google:2025年10月に動画生成モデルVeo 3.1と、Flow(Googleの映像制作ツール)の更新を発表しました(Google公式ブログ)。Geminiアプリでは、Veo 3.1に代わって動画の生成・編集モデル「Gemini Omni 1.1 Flash」が使われ、最大10秒・音声つきの動画を作れると案内されています。利用にはGoogle AIのサブスクリプションが必要です(Gemini 公式)
  • Runway:2025年12月に動画生成モデルGen-4.5を全有料プランに提供したと更新履歴で案内しています。MV制作向けの用途ページも公開しています(Runway Changelog/Runway 用途ページ)
  • OpenAI Sora:OpenAIは、Web版・アプリを2026年4月26日に、API(他のシステムから機能を呼び出す仕組み)を2026年9月24日に終了すると案内していました(OpenAI ヘルプセンター)。過去の事例で名前が出てきますが、新規制作の選択肢にはなりません

どのツールでも、商用利用の可否や生成物の扱いはプランごとに違います。料金や条件は契約前に各社の公式ページで確認してください。画像生成と動画生成の使い分けは画像生成と動画生成の違いの記事も参考になります。

動画生成AIに渡すカット指示の型
入力画像:(確定したキービジュアル。主人公の顔・服装・色はこの画像のまま)
カット:サビ前の4秒。主人公が振り返る
動き:人物はゆっくり振り返るだけ。カメラは正面からわずかに寄る
光と色:夜明け前、青い環境光に橙の街灯が一灯
画面比率:16:9(YouTube用)。縦型版は別に作る
除外:文字、ロゴ、実在の店や看板、急なカメラの回転
1カットで指示する動きは1つに絞ります。人物の動きとカメラの動きを両方大きくすると、顔や体が崩れやすくなります(編集部の経験則)。
1つのツールで全部を作ろうとせず、工程ごとに役割を分ける
1つのツールで全部を作ろうとせず、工程ごとに役割を分ける

工程4〜5|リップシンクと編集で仕上げる.

工程4:リップシンクで「歌うカット」を作る

リップシンクは、映像の人物の口の動きを音声に合わせる処理です。MVでは、主人公が歌っているように見せるカットで使います。

  • Runway:2024年3月にLip Sync機能を提供開始し、その後、対応尺の延長や複数の顔への対応を行ったと更新履歴で案内しています。2025年7月には、演技を撮影した動画の動きをキャラクターに移すAct-Two(次世代のモーションキャプチャモデル)を公開しました(Runway Changelog)
  • Kling:リップシンク機能のページで、歌唱音声のアップロードに対応し、実写風・3D・2Dの人型キャラクターに使えると案内しています(Kling公式)

どの機能が現在も単体で提供されているか、歌声に対応しているかはツールの更新で変わります。使う前に公式ページで確認してください。

リップシンクを自然に見せるコツ(編集部の目安)

  • 正面〜斜め前の顔で使う。横顔や顔が小さいカットは破綻しやすい
  • ボーカルだけの音声(伴奏を抜いたもの)を入力すると、口の動きが合いやすい
  • 歌うカットは全体の一部にとどめ、イメージカットと交互に編集する

工程5:編集で1本にまとめる

01

ビートに合わせて仮編集する

絵コンテの順に並べ、カットの切り替えを拍に合わせます。最初は粗くてよいので、通しで見られる状態を早く作ります。

02

足りないカットを追加生成する

通しで見て、間が空く部分やつながらない部分だけ追加で生成します。ここで全体を作り直さないことが、工数を抑えるコツです。

03

色をそろえる

生成したカットは色味が少しずつ違います。カラーグレーディング(色の調整)で全体のトーンを統一します。

04

文字とクレジットを入れる

曲名・アーティスト名に加え、使用したツールやAI利用の表記を、自社やレーベルの方針に合わせて入れます。

05

書き出しと公開前チェック

YouTube用の横型、ショート動画用の縦型など、媒体ごとに書き出します。縦型展開の考え方は<a href="https://sac.epoch-inc.jp/magazine/articles/sns-ad-video-ai/">SNS広告動画をAIで作る方法</a>も参考にしてください。

体制と役割分担の目安

少人数で作る場合でも、監督(コンセプトと絵コンテ、最終判断)、生成担当(画像・動画・リップシンク)、編集担当(つなぎ・色・書き出し)の3つの役割を意識しておくと、判断の基準がぶれにくくなります。1人で兼ねる場合も、絵コンテの確定と、最終的な通しチェックのタイミングは分けて設けてください。外部に依頼するかどうかの判断材料はAI動画の内製・外注の比較記事でまとめています。

公表されたAI MVの事例.

アーティストや企業が、AIを使ったことを公表しているMVの例です。

公開時期作品AIの使い方(公表内容)出典
2023年2月Linkin Park「Lost」アニメの原画で学習させたAIを実写映像に適用して制作<a target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://80.lv/articles/linkin-park-has-released-an-amv-for-a-previously-unheard-song">80 Level</a>
2024年5月Washed Out「The Hardest Part」監督Paul Trillo。OpenAIのSoraで生成した55のクリップをつないで制作<a target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://tech.yahoo.com/ai/articles/cant-believe-openai-sora-helped-164548332.html">Yahoo Tech</a>
2025年3月香取慎吾「Circus Funk(feat. Chevon)」サイバーエージェントのCyber AI Productionsが、生成AIとバーチャルプロダクション(LEDディスプレイの背景を使う撮影)で制作。表現を「従来の1/3の期間で実現」と発表<a target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://www.cyberagent.co.jp/news/detail/id=31544">サイバーエージェント</a>
2025年10月〜Google「MV with Gemini」Googleが2025年10月に始めた企画。TOWA TEIら国内のアーティストが、動画生成AI『Veo 3』を中心にGeminiを使ってMVを制作<a target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://www.advertimes.com/?p=532930">AdverTimes</a>
2025年12月藤井隆『light showers』全10曲Gemini、Veo 3、Nano Banana(Gemini 2.5 Flash Image の通称)を使い、収録10曲すべてのMVを制作<a target="_blank" rel="noopener noreferrer nofollow" href="https://www.zaikei.co.jp/releases/3217742/">吉本興業のプレスリリース</a>
海外の作品に加え、国内アーティストの事例も出てきている
海外の作品に加え、国内アーティストの事例も出てきている

これらの事例に共通するのは、AIで作ったことを隠さずに公表している点です。制作期間の短縮や新しい表現を打ち出す一方で、受け手の評価は作品ごとに分かれます。AIを使う理由を企画の段階で言語化しておくことが、公開後の説明にも役立つと考えられます(編集部の見立て)。

音楽と映像の権利、公開時のルール.

既存の楽曲を使う場合

MVに使う楽曲には、作詞・作曲の著作権に加えて、録音された音源についての権利(著作隣接権。レコード会社やアーティストなどが持つ権利)があります。JASRACは、市販のCDやダウンロード音源を動画に使う場合は、著作権とは別に著作隣接権の許諾が必要で、レコード会社などへの問い合わせが必要だと案内しています。また、広告目的の動画などは個別の手続きが必要とされています(JASRAC「動画投稿(共有)サービスでの音楽利用」)。アーティスト本人やレーベルからの依頼で作る場合も、映像の利用範囲を契約で確認してください。

AIで作った音楽を使う場合

音楽生成AIの利用条件は、2025〜2026年に大きく変わっています。たとえばSunoは、2026年9月3日から新しい利用規約とダウンロード上限を導入し、有料プランでダウンロードした曲は商用・個人利用できる一方、無料プランの試用ダウンロードは個人利用に限るとしています(Suno公式ブログ)。同社は2025年11月にワーナー・ミュージック・グループと和解し、2026年9月に同社などと提携した新モデルを公開したと報じられています(Music Business Worldwide)。AI音楽の商用利用の考え方はAI音楽の商用利用の解説記事で詳しく解説しています。

YouTubeで公開するとき

YouTubeは、実在の人物が言っていないことを言ったように見せる映像や、現実にない場面のリアルな生成などについて、アップロード時の開示を求めています。AIで生成した音楽も開示の例に挙げられています。明らかに非現実的な映像や、色調整などの軽微な編集は対象外とされています(YouTubeヘルプ「生成AIコンテンツの使用に関する開示」)。映像の著作権リスク全般はAI動画の著作権リスクの記事を参照してください。

公開前チェックリスト

Checklist
  • 楽曲(作詞・作曲)と音源(原盤)の両方について、使用の許諾を確認した
  • AI音楽を使う場合、生成したプランで商用利用が認められていることを確認した
  • 使った画像・動画生成ツールのプランで、商用利用が認められている
  • 実在の人物や既存の作品・キャラクターに似たカットがない
  • プロンプトに実在の人物名・作品名を入れていない
  • YouTubeの開示が必要な内容かを判断し、必要なら設定した
  • 生成ログ(ツール名・日時・プロンプト・元画像)をカットごとに保存した

よくある質問.

QAIだけで1曲分のMVを作るのに、どのくらいの期間がかかりますか?
A曲の長さ、カット数、求める品質によって大きく変わるため、一律には言えません。サイバーエージェントは香取慎吾さんのMVについて、表現を従来の1/3の期間で実現したと発表しています。実務では、絵コンテ作りと編集に想定以上の時間がかかることが多いため、その分を見込んで計画してください。
Q主人公の顔がカットごとに変わってしまいます。
A文章から直接動画を作っていないかを確認してください。主人公をまず画像で確定し、その画像を動画生成の最初のフレームとして使うと、ぶれを抑えやすくなります。1カットで指示する動きを1つに絞ることも有効です。
Qリップシンクがうまく合いません。
A伴奏を抜いたボーカルだけの音声を使う、顔が正面に近いカットを選ぶ、1回で処理する尺を短くする、の3点を試してください。歌声に対応していない機能もあるため、ツールの対応状況も確認が必要です。
QAIで作ったMVは、YouTubeで収益化できますか?
AAIを使ったこと自体で収益化が一律に禁じられているわけではありませんが、YouTubeは改変・合成コンテンツの開示を求めており、開示を繰り返し怠った場合の措置についても案内しています。楽曲の権利処理とあわせて、YouTubeのポリシーを確認してください。
Q企業の広告用の映像にも、同じ作り方が使えますか?
A使えます。ただし広告では、商品の見せ方に景品表示法がかかり、音楽の利用にも広告目的の手続きが必要になる場合があります。ブランド映像の作り方は<a href="https://sac.epoch-inc.jp/magazine/articles/ai-brand-film-guide/">AIブランドフィルムの作り方</a>、内製か外注かの判断は<a href="https://sac.epoch-inc.jp/magazine/articles/ai-video-inhouse-vs-outsource/">AI動画の内製・外注の比較記事</a>で解説しています。

まとめ|AI MVは「設計」と「編集」で完成度が決まる.

  • 動画生成AIが一度に作れるのは短いカット。曲を小節で分けた絵コンテが土台になる
  • 人物と世界観は画像で先に固め、画像から動画にする
  • リップシンクは歌うカットに絞り、ボーカルだけの音声で処理する
  • ツールの提供状況は変化が速い。契約前に公式で現行の条件を確認する
  • 公開前に楽曲・音源の許諾、AI音楽の条件、YouTubeの開示を確認する

※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年10月時点の情報です。

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