この記事でわかること
- 内製と外注で「何にお金を払っているか」の違い
- ツール代・人件費・学習コストと外注費の比べ方
- 費用・スピード・品質・権利リスク・ノウハウの5軸での比較
- 内製・外注・ハイブリッドが向いているケース
- 5つの問いで決める判断フローと、内製に切り替えるときの手順
「内製か外注か」は会社単位ではなく、動画の用途ごとに決めるのが現実的です。本数が多くスピードが価値になる動画(SNS投稿、広告の検証用など)は内製、1本の失敗が許されない動画(CM、ブランド映像)は外注、その中間は「企画と量産は社内、マスターや仕上げは外注」というハイブリッドが、費用と品質のバランスを取りやすい選び方です。
内製と外注は「何にお金を払うか」が違う.
AI動画の内製と外注を比べるとき、最初に押さえたいのは、両者は同じものにお金を払っているわけではないという点です。
- 内製で払っているのは、ツールの利用料と、担当者の時間、そして使いこなせるようになるまでの学習の時間です
- 外注で払っているのは、完成した動画と、企画・演出・仕上げを含めた品質の保証、そして社内の時間を使わずに済むことです
そのため、「ツールは月数千円、外注は数十万円だから内製が安い」という比べ方は成り立ちません。ツール代の差ではなく、担当者の時間を含めた1本あたりの総費用と、その動画に求める品質で比べる必要があります。

費用を比べる|ツール代・人件費・学習コスト vs 外注費.
内製の費用:ツール代は小さく、人の時間が大きい
動画生成ツールの料金は、月額のサブスクリプション(定額制)に、生成に使う「クレジット」(生成回数や秒数に応じて消費するポイント)がついている形が一般的です。公式サイトで確認できた主なツールの料金は次のとおりです。
| ツール | プラン | 月額料金 | 含まれるもの(公式の記載) |
|---|---|---|---|
| Adobe Firefly | Firefly Standard | 1,580円(税込) | 生成クレジット2,000/5秒の動画で最大20本 |
| Adobe Firefly | Firefly Pro | 3,180円(税込) | 生成クレジット4,000/5秒の動画で最大40本 |
| Adobe Firefly | Firefly Pro Plus | 6,600円(税込) | 生成クレジット10,000/5秒の動画で最大100本 |
| Runway | Standard | 15ドル(年払いなら月12ドル) | 月625クレジット |
| Runway | Pro | 35ドル(年払いなら月28ドル) | 月2,250クレジット |
出典:Adobe Firefly プランと価格 / Runway Pricing(いずれも2026年10月時点で確認)。このほか、台本づくりに対話型AI、ナレーションに音声生成AI、仕上げに動画編集ソフトを組み合わせることが多くなります。たとえばWHITE株式会社は、生成AIだけで実写風のCMを制作した際のツール費を約1万5,000円(人件費を除く)と公表し、画像生成AI、音声生成AI、動画生成AI、編集ソフトの内訳を示しています(WHITE株式会社のプレスリリース)。
ただし同社は、この制作に映像制作の専門職ではない担当者1名で1か月かかったとしています。ツール代が1万円台でも、担当者の1か月分の時間が別にかかっている、ということです。内製の費用は次の式で考えると、外注費と同じ物差しで比べられます。
内製1本あたりの費用 = (ツール代の月額 ÷ 月の制作本数) +(1本あたりの作業時間 × 担当者の時間単価) +(確認・修正にかかる時間 × 確認者の時間単価) +(立ち上げ期の学習時間 × 時間単価 ÷ 想定する総本数)
外注の費用:完成品の単価で見える
外注の費用は、制作会社の料金表で比較的はっきりわかります。2026年10月時点で公開されている料金の例は次のとおりです(いずれも税別の最低価格)。
- フィールドキャスター「AI VIDEO PLAN」:SNSショート(縦型)3本セットや、90秒以内のサービス説明動画などが30万円〜。修正は2回まで(同社プレスリリース)
- REXTAR「RAPTOR AI VIDEO STUDIO」:SNS広告向け15秒の単品が28.5万円〜、毎月6本を制作する月額プランが49.8万円〜(3か月から、2026年11月2日提供開始予定)(同社プレスリリース)
- プルークス「生成AI動画制作プラン」:ライト1本60万円〜、5本パッケージ200万円〜(同社プレスリリース)
つまり、外注は、公開料金の例では1本・1セット30万円前後〜(プルークスは60万円〜)が目安です。内製の式で出した1本あたりの費用がこれを下回り、かつ品質の要求を満たせるなら、内製のほうが合理的といえます。外注先への依頼の仕方はAIクリエイターへの依頼|費用相場と発注の型で詳しく解説しています。
5つの軸で比べる|費用・スピード・品質・リスク・ノウハウ.
費用以外の観点も含めて、内製と外注を比べると次のようになります。どちらが優れているかではなく、自社の動画にとってどの軸が重要かを見てください。
| 比べる軸 | 内製 | 外注 | 判断のポイント |
|---|---|---|---|
| 費用 | ツール代は月数千円〜数万円。費用の中心は担当者の時間 | 公開料金の例では1本・1セット30万円前後〜(プルークスは60万円〜) | 本数が多いほど内製が有利。単発なら外注が早くて確実 |
| スピード | 修正・差し替えをすぐ回せる。最初は学習に時間がかかる | 公開例では最短1.5〜2週間程度(プルークス、フィールドキャスターの説明。構成確定後の目安)。修正は回数の取り決めに従う | 「明日までに3パターン」が多いなら内製 |
| 品質 | 担当者のスキル次第でばらつく | 企画・演出・音まで一定の水準で仕上がる | ブランドの顔になる動画は外注が安全 |
| 権利・リスク管理 | 類似チェックや表記も自社の責任 | 確認体制を契約で求められる。ただし最終責任は発注側にも残る | 社内ルールがないうちは外部の確認を入れる |
| ノウハウ蓄積 | プロンプトや型が社内に残る | 社内には残りにくい | 長く続ける用途ほど内製の価値が大きい |
内製化の現場で起きていること
動画に限った調査ではありませんが、ナイル株式会社が2026年8月にコンテンツ制作を内製している企業の担当者954人に行った調査では、内製化を進めた理由として「外注コストを削減するため」が44.4%で最も多く、「生成AIで制作するようになったため」も27.0%でした。一方、内製化の課題としては「制作できる人材が足りない」(42.3%)、「担当者によって品質にばらつきがある」(41.4%)が上位に挙がっています(ECのミカタの記事、ナイルのSEO相談室)。
コストを下げるために内製を始めたものの、人と品質の問題にぶつかるという構図は、AI動画でもそのまま当てはまります。内製を選ぶなら、ツールの導入と同時に「誰が作り、誰が確認するか」を決めておくことが欠かせません。
権利面では、内製でも外注でも「公開した会社」の責任は残ります。外注先が確認してくれる場合でも、使用したツール、生成のログ、確認した内容を納品物と一緒に受け取っておくと、後から問われたときに説明できます。AI動画特有のリスクは<a href="https://sac.epoch-inc.jp/magazine/articles/ai-video-copyright-risks/">AI動画の著作権リスクの解説記事</a>を参照してください。
内製・外注・ハイブリッドが向いているケース.

内製が向いているケース
- SNSの投稿動画や、商品紹介動画の差し替えなど、本数が多く、更新の頻度が高いもの
- 社内研修やマニュアル動画など、社外の目に触れにくく、多少の粗さが許されるもの
- 広告のクリエイティブテストで、冒頭の数秒だけを何パターンも試したいもの
外注が向いているケース
- テレビCMやブランド映像など、会社の顔になり、1本の失敗が許されないもの
- 実在の商品や人物の再現性が厳しく求められ、手作業の仕上げが多く必要なもの
- 社内に担当者がおらず、年に数本しか作らないもの
ハイブリッドが向いているケース
実際には、多くの会社にとって現実的なのはこの中間です。代表的な型は次の3つです。
| ハイブリッドの型 | 社内でやること | 外に任せること | 向いている用途 |
|---|---|---|---|
| 企画は社内、制作は外注 | 目的・ターゲット・訴求軸・構成案 | 生成・編集・音の仕上げ | 社内に動画の作り手はいないが、商品理解は社内が一番深い場合 |
| マスターは外注、派生は社内 | 冒頭違い・サイズ違い・テキスト差し替え | 最初の1本(マスター)の企画と制作 | SNS広告の継続的な検証 |
| 制作は社内、確認は外部 | 生成・編集までの制作作業 | 公開前の権利・表記チェック、品質の監修 | 内製を始めたばかりで、社内ルールが固まっていない時期 |
たとえば採用動画であれば、職種ごとの説明動画は社内で量産し、会社紹介のメイン動画だけを外注する、といった分け方ができます。採用動画の作り方はAI採用動画の作り方|費用相場と制作手順で詳しく紹介しています。また、そもそも動画にするべきか画像で足りるかの判断は生成AIの画像と動画の違い|選び方と勘所が参考になります。
判断フロー|5つの問いで決める.
迷ったときは、次の5つの問いに上から順に答えてみてください。どこかで「外注」「ハイブリッド」側に分岐したら、その工程だけを外に出すところから検討するのが現実的です。

内製に切り替えるときの進め方.
外注から内製へ、あるいはハイブリッドへ移るときは、いきなり全部を切り替えないことが大切です。次の順序で進めると、品質を落とさずに移行できます。
用途を1つに絞る
SNS投稿や広告の派生パターンなど、本数が多く、失敗しても影響が小さい用途から始めます。
外注の納品物を「お手本」として残す
外注していた動画の構成、尺、テロップの入れ方、音の付け方を分解して、社内の型にします。
1本を内製して工数を測る
企画から公開までにかかった時間を記録し、内製1本あたりの費用を計算します。外注費と比べる材料になります。
確認の担当とルールを決める
類似チェック、商標や人物の確認、AI利用の表記などを、誰がどの基準で確認するかを1枚にまとめます。
型を配って本数を増やす
うまくいったプロンプトと構成をテンプレートにして、担当者が変わっても同じ品質で作れるようにします。
内製を始める前の確認リスト
Checklist- 動画を作る担当者と、確認する担当者を別々に決めた
- 担当者が毎月動画に使える時間の目安を決めた
- 使うツールの商用利用の条件を、契約するプランで確認した
- 生成のログ(日時・ツール・プロンプト)を保存する場所を決めた
- 公開前の類似チェックと表記の確認手順を文書にした
- 外注に戻す判断基準(品質・工数)を決めた
ツールを選ぶときの商用利用の確認方法は、商用利用で安全な画像生成AI|選び方と確認手順で詳しく解説しています。
よくある質問.
Qツール代が月数千円なら、内製のほうが必ず安くなりますか?
Q内製にしたら、外注先との関係はなくなりますか?
Q内製の担当者には、どんなスキルが必要ですか?
Q外注する場合、AIで作ったかどうかは開示してもらうべきですか?
Q小さな会社でも内製はできますか?
まとめ|「用途ごと」に内製・外注・ハイブリッドを使い分ける.
- 内製は人の時間と学習に、外注は完成品と品質の保証にお金を払っている
- 費用はツール代ではなく、担当者の時間を含めた1本あたりの総費用で比べる。外注は公開料金の例では1本・1セット30万円前後〜(プルークスは60万円〜)が目安
- 本数が多くスピードが価値になる動画は内製、1本の失敗が許されない動画は外注
- 多くの会社に現実的なのは、企画は社内・制作は外注、マスターは外注・派生は社内などのハイブリッド
- 内製に切り替えるときは、1本作って工数を測り、確認の担当とルールを決めてから広げる
参考にした公開情報:Adobe Firefly プランと価格 / Runway Pricing / WHITE株式会社 / フィールドキャスター / REXTAR / プルークス / ECのミカタ(ナイル調査)
※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年10月時点の情報です。
自社の動画を「どこまで社内で作り、どこから任せるか」、用途ごとに一緒に整理します.


