この記事でわかること
- 著作権が発生する「著作物」の条件と、AI生成物で問題になる理由
- 創作意図と創作的寄与とは何か。プロンプト・試行回数・選択・加筆修正がどう評価されるか
- 米国著作権局のZarya of the Dawn判断と、2025年のレポートPart 2の考え方
- 著作権が発生しない場合に起きることと、その手当て
- 権利を主張しやすくする工程設計と、残しておくべき記録
AIが自律的に生成しただけのものには、原則として著作権は発生しません。一方、人がAIを「道具」として使い、創作意図をもって創作的な寄与をした場合は、著作物として保護されうると整理されています。確実なのは、人が加筆・修正した部分です。企業としては、人が創作する工程をあらかじめ組み込み、その記録を残しておくことが、権利を主張するための現実的な備えになります。
そもそも著作権はいつ発生するのか.
日本の著作権法では、著作権は著作物を創作した時点で自動的に発生し、登録などの手続きは必要ありません(無方式主義)。そして著作物は、2条1項1号で「思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」と定義されています。
ポイントは「思想又は感情」と「創作的に表現した」の2つです。思想や感情を持つのは人間なので、AIそのものが著作者になることはありません。問題は、人がAIを使って作ったものを、どこまで「人が創作的に表現したもの」と評価できるかです。
「侵害するか」と「保護されるか」は別の問題
生成AIと著作権の論点は、大きく3つに分かれます。学習段階で他者の著作物を使ってよいか、生成物が他者の著作権を侵害しないか、そして生成物に自分の著作権が発生するか、です。本記事が扱うのは3つめです。前の2つはAI学習データと著作権の解説記事と生成AIの依拠性と著作権侵害の解説記事で整理しています。なお「考え方」も、AI生成物に著作物性が認められる場合でも、既存の著作物との類似性と依拠性があれば侵害になりうると注意を促しています。自社の著作権があることは、他者の権利を侵害していないことの証明にはなりません。
文化審議会「考え方」の整理|創作意図と創作的寄与.
「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)は、AI生成物の著作物性について、次のように整理しています。
- 人が何ら指示を与えず、または簡単な指示を与えるにとどまり「生成」の指示をしただけで、AIが自律的に生成したものは、著作物に該当しないと考えられる
- 人が思想や感情を創作的に表現するための「道具」としてAIを使用したと認められれば、著作物に該当し、AI利用者が著作者となると考えられる
- 道具として使用したかどうかは、人の「創作意図」があるか、および人が「創作的寄与」と認められる行為を行ったかによって判断される
創作意図とは、思想や感情をある結果物として表現しようとする意図のことです。実務上より問題になるのは創作的寄与で、「考え方」は、どのような行為が創作的寄与にあたるかは個々の事例に応じて判断され、生成AIの場合もその点は変わらないとしたうえで、判断の要素を示しています。
| 要素 | 「考え方」の整理 | 実務での意味 |
|---|---|---|
| 指示・入力(プロンプト等)の分量・内容 | 創作的表現といえるものを具体的に示す詳細な指示は、創作的寄与があると評価される可能性を高める。一方、長大な指示でも、創作的表現に至らないアイデアを示すにとどまれば影響しない | 長さではなく、構図・配色・表情など<strong>表現そのもの</strong>をどこまで具体的に指定したか |
| 生成の試行回数 | 回数が多いこと自体は影響しない。ただし、生成物を確認し指示・入力を修正しつつ試行を繰り返す場合は、著作物性が認められることも考えられる | 「何回生成したか」ではなく、<strong>何を見て、どこを直したか</strong>の履歴 |
| 複数の生成物からの選択 | 単なる選択行為自体は影響しない。ただし、通常創作性があると考えられる行為の要素として選択がある場合もあり、考慮が必要 | 単独の1枚を選ぶだけでは弱い。複数素材の<strong>組み合わせ・構成</strong>は別に評価されうる |
| 人による加筆・修正 | 創作的表現といえる加筆・修正を加えた部分には、通常、著作物性が認められる。それ以外の部分の著作物性には影響しない | 最も確実な方法。ただし保護されるのは<strong>手を加えた部分</strong>に限られる |

プロンプトの工夫はどこまで評価されるか
「考え方」の整理で注目したいのは、指示の長さではなく内容が問われている点です。たとえば「夕暮れの海辺に立つ女性、映画のような雰囲気」という指示は、どれだけ形容詞を足してもアイデアの指定にとどまりやすいと考えられます。これに対し、人物の配置、視線の向き、光の当たり方、画面の分割といった表現の具体的な要素を指定し、出力を見ながらそれを修正していく工程は、創作的寄与として評価される余地が広がります(編集部の見立て)。
ただし「考え方」には法的な拘束力はなく、最終的な判断は裁判所に委ねられます。国内では2026年10月時点で、AI生成物の著作物性を正面から判断した判決は、編集部が確認した範囲では見当たりません。参考になる動きとして、2025年11月には、生成AIに具体的な指示を繰り返して制作された画像を著作物と判断したうえで、千葉県警が無断複製の疑いで男性を書類送検したと報じられています(共同通信配信・熊本日日新聞 2025年11月20日)。これは捜査機関の判断であり、裁判所の判断ではない点に注意してください。
米国著作権局の判断|「プロンプトだけでは不十分」.
米国は著作権の登録制度があり、米国著作権局(U.S. Copyright Office)が登録の可否を判断する過程で、AI生成物についての考え方を具体的に示してきました。日本の法律とは異なりますが、論点の整理として参考になります。
Zarya of the Dawn(2023年2月21日)
画像生成AIのMidjourneyで作った画像を使ったコミック作品について、著作権局は登録を見直しました。結論は、作者が書いた文章と、文章と画像の選択・調整・配列には著作権が認められる一方、Midjourneyが生成した画像そのものは人の著作物ではないため保護されない、というものです(米国著作権局の判断書)。当初の登録は取り消され、AIが生成した画像を除外した、より限定的な登録に置き換えられました。著作権局はその後、2023年3月に登録の手引きを公表し、AIが生成した部分を含む作品を登録する際には、その旨を開示することを求めています(Federal Register 2023年3月16日)。
レポート「Copyright and Artificial Intelligence, Part 2」(2025年1月29日)
著作権局は2025年1月29日、AI生成物の著作物性をテーマにしたレポートのPart 2を公表しました(米国著作権局 AIページ)。主な結論は次のとおりです(Part 2 本文)。
- 現在一般に利用できる技術のもとでは、プロンプトだけでは、出力について人が著作者となるだけの十分なコントロールを与えない
- 人が自分の著作物を入力し、それが出力の中に知覚できる形で残っている場合は、その部分について人が著作者となる
- AI生成物に対する人の選択・配列や修正は、その人の寄与の範囲で保護されうる
- 著作物性は個別に判断される。AI生成物のために著作権を広げたり、新たな独自の権利をつくったりする必要性は示されていない
また、AIだけを著作者とする登録を求めたThaler事件では、2026年3月に連邦最高裁が上告を受理せず、人間の著作者が必要とする判断が確定しています(SCOTUSblog)。一方、プロンプトを大量に重ねて制作した画像の登録拒絶を争うAllen対Perlmutter事件がコロラド地区連邦地裁で係争中で、2026年10月時点で判決は確認できていません。

日本の「考え方」は、詳細な指示や、出力を見ながら指示を修正する試行の反復が著作物性につながる余地を認めています。米国著作権局は、現状の技術ではプロンプトだけでは足りないという立場です。海外でも使う制作物は、より厳しい米国側の考え方でも説明できるよう、人が手を加える工程を入れておくと安心です(編集部の見立て)。
著作権が発生しないと、何が困るのか.
AI生成物に著作権が発生しない場合、そのままでは次のような問題が起きえます。
- まねされても著作権では止められない:他社が同じような画像やコピーを使っても、著作権侵害を主張できない可能性がある
- 納品物の権利処理があいまいになる:受託制作で「著作権を譲渡する」と契約しても、譲渡すべき著作権がそもそも存在しないことがある
- ロゴやキャラクターの独占が難しくなる:長く使うブランド資産ほど影響が大きい
著作権以外の手当て
「考え方」は、著作物性がないものでも、判例上、その複製や利用が営業上の利益を侵害するといえる場合には、民法上の不法行為として損害賠償請求が認められうるとしています。もっとも、最高裁判例(北朝鮮事件、2011年12月)は、著作物にあたらないものの利用は、著作権法が保護する利益とは異なる法的に保護された利益を侵害するなどの特段の事情がない限り不法行為にならないとしており、ハードルは高いと考えたほうが安全です。ロゴなら商標登録、商品デザインなら意匠登録といった、他の制度で守ることも検討してください。
また「考え方」は、著作物にあたらないものを著作物であると称して取引した場合、契約上の責任や詐欺などに問われる可能性にも触れています。AIを使ったことを伏せて「当社の著作物」として販売・ライセンスすることは避けるべきです。権利の帰属や契約での決め方はAI生成物の著作権は誰のものかの解説記事で詳しく扱っています。
権利を主張しやすくする工程設計.
ここからは、実務で「人の創作的寄与」を確保するための工程の組み方です。どれも著作物性を保証するものではありませんが、主張の材料を厚くすることにつながります。
人が「最初の表現」を作る
ラフスケッチ、構図案、撮影した写真、コピーの原案など、人が作った表現からスタートします。米国著作権局のPart 2も、人が入力した自分の作品が出力に残る部分は保護されうるとしています。自分の素材をAIで加工する形にすると、人の表現が残りやすくなります。
表現の要素を具体的に指示し、出力を見て直す
構図・配色・人物の配置・光の向きなど、表現そのものを指定し、出力を確認しながら指示を修正します。「考え方」が著作物性につながりうるとする、修正しながらの試行の反復にあたる工程です。
人が加筆・修正して仕上げる
AIの出力をそのまま使わず、描き足し、レタッチ、文章の書き直しを人が行います。加筆・修正した部分は通常、著作物性が認められるとされており、最も確実性の高い工程です。
複数の素材を選び、構成する
AIの出力や人の素材を組み合わせ、レイアウトや配列を人が決めます。Zarya of the Dawnでも、文章と画像の選択・配列には著作権が認められました。
工程ごとに記録を残す
誰が、どの工程で、何をしたかを残します。後で権利を主張するときの材料になるだけでなく、社内の職務著作(会社名義の著作物)の整理や、クライアントへの説明にも使えます。

記録はプロンプトの保存だけでは不十分です。人が何を考え、どこを直したかが分かる形で残すことが大切です。文化庁の「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月)も、生成に用いたプロンプト等、生成物の生成過程を確認できる状態の確保に努めることを挙げています。プロンプトの書き方そのものはプロンプトの書き方の解説記事も参考にしてください。
制作物ごとに確認したいこと
Checklist- 人が作った素材(ラフ・写真・原稿)から制作を始めたか
- 表現の具体的な要素を指定し、出力を見て修正した履歴が残っているか
- AIの出力に、人が加筆・修正した部分があるか。その前後が比較できるか
- 複数の素材の選択・構成を人が決めたか
- 工程ごとの担当者と日時が記録されているか
- AIを使ったことと、人が手を加えた範囲を、クライアントや社内に説明できるか
- 独占したい制作物について、商標・意匠など著作権以外の保護も検討したか
よくある質問.
Q長く詳しいプロンプトを書けば、著作権は発生しますか?
Q何百回も生成して、いちばん良いものを選んだ場合はどうですか?
QAI生成物に人が少しだけ手を加えた場合、全体に著作権が発生しますか?
Q社員が業務でAIを使って作ったものの著作権は、会社のものになりますか?
QAIで作ったことを明かすと、権利の主張で不利になりますか?
まとめ|「人が創作した部分」をつくり、残す.
- AIが自律的に生成しただけのものは原則として著作物にならない
- 人がAIを道具として使い、創作意図と創作的寄与があれば著作物になりうる
- 評価されうるのは表現の具体的な指示と修正の反復、人の素材の活用、加筆・修正、選択・構成。回数や長さではない
- 米国著作権局はプロンプトだけでは不十分とし、AI生成部分の開示を求めている
- 権利を主張したい制作物は、人が手を加える工程と記録を最初から設計に入れる
国内外の裁判の動きは生成AIと著作権の判例・裁判例まとめ、制度の流れは生成AIと著作権の法改正・制度整備まとめで整理しています。
参考にした一次情報:文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月15日) / 文化庁「AIと著作権に関するチェックリスト&ガイダンス」(2024年7月31日) / e-Gov法令検索「著作権法」 / U.S. Copyright Office「Zarya of the Dawn」(2023年2月21日) / U.S. Copyright Office「Copyright and Artificial Intelligence, Part 2: Copyrightability」(2025年1月)
※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年10月時点の情報です。
AIを使った制作物の権利を守るための工程設計と記録の仕組みづくりを支援します.
