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生成AIと著作権の判例・裁判例まとめ|国内外の主な紛争

2026.11.03
SAC(Smart AI Collective)編集部READ 12 MIN2026.11.03

この記事の要約

NYT対OpenAI、Getty対Stability AI、Anthropicの和解、国内の新聞社訴訟まで。判決と係争中を分けて、論点別に整理します。

「生成AIと著作権の判例を知りたい」と調べると、訴訟の提起、判決、和解、報道されただけの紛争が混ざって紹介されていることがよくあります。しかし、裁判所が判断を示した「判決」と、まだ結論が出ていない「係争中」の案件とでは、実務への意味がまったく違います。本記事では、2026年10月時点で確認できた国内外の主な裁判・紛争を、判決・和解・係争中・捜査機関の判断に分けて整理し、年表と論点別にまとめます。
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この記事でわかること

  • 「判例」「裁判例」「係争中」「和解」の違いと、それぞれの実務上の重み
  • 米国の主な訴訟(NYT対OpenAI、Thaler事件、Anthropicの和解など)の2026年10月時点の状況
  • 英国のGetty対Stability AI判決と、ドイツのGEMA対OpenAI判決の要点
  • 国内の新聞社によるAI事業者への提訴と、千葉県警の書類送検の位置づけ
  • 学習・出力・モデル・生成物という4つの論点で見たときの、裁判の動きの読み方
結論

2026年10月時点で、生成AIと著作権をめぐる裁判所の判断は米国・英国・ドイツで出はじめていますが、結論は国と論点によって分かれています。国内では、生成AIと著作権を正面から扱った判決は編集部が確認した範囲では見当たらず、新聞社の訴訟は係争中です。企業は個別の判決に一喜一憂するより、「学習」と「出力」を分けて考える国内の整理に沿って、出力側の確認を固めるのが現実的です。

「判例」と「係争中」を区別して読む.

最初に言葉をそろえておきます。法律の世界で「判例」は、狭い意味では最高裁判所の判断を指し、下級審の判断は「裁判例」と呼び分けるのが一般的です。本記事では、裁判所が判断を示したものをまとめて「判決・決定」と呼び、それ以外と区別します。

区分意味実務での読み方本記事の例
判決・決定裁判所が判断を示したものその国・その事案での結論。上訴されれば変わりうるThaler事件、Getty(英国)、GEMA、Anthropic・Metaの地裁判断
和解当事者が合意して終わらせたもの法的な結論は示されない。金額や条件は交渉の結果Anthropicの作家集団訴訟
係争中提訴されたが結論が出ていないもの原告の主張は「主張」にすぎない。請求額も確定ではないNYT対OpenAI、国内新聞社対Perplexity
捜査・行政の判断警察や官庁の判断裁判所の判断ではない。起訴・判決で覆ることもある千葉県警の書類送検、米国著作権局の登録判断

また、海外の判決はその国の法律に基づく判断です。米国のフェアユース(公正な利用であれば許諾なく使えるとする米国法の一般規定)や、英国の「侵害複製物」(著作権を侵害して作られたコピー)の解釈は、日本の著作権法とは仕組みが違います。日本での判断の目安としては、文化審議会著作権分科会法制度小委員会の「AIと著作権に関する考え方について」(2024年3月)が基本になります。海外の動きは「論点の先取り」として読むのが適切です。

生成AIと著作権をめぐる主な動き。2025年以降、学習をめぐる判断が相次いだ
生成AIと著作権をめぐる主な動き。2025年以降、学習をめぐる判断が相次いだ

米国|学習のフェアユースをめぐる判断が出はじめた.

生成AIと著作権の訴訟が最も多いのは米国です。ここでは、企業の実務に関係の深いものを中心に取り上げます。

Bartz対Anthropic(作家らの集団訴訟)|判決の後に和解

作家らが、AIの学習に書籍を無断で使われたとしてAnthropicを訴えた集団訴訟です。2025年6月23日、カリフォルニア北部地区連邦地裁のAlsup判事は、正規に購入した書籍をスキャンして学習に使った行為はフェアユースにあたるとする一方、海賊版サイトから入手した書籍を恒久的なライブラリとして保持した行為はフェアユースにあたらないと判断しました(判決の解説)。その後、海賊版に関するクラス(集団)が認定され(Publishers Weekly)、当事者は15億ドルでの和解に至りました。2026年7月20日、同地裁のMartínez-Olguín判事が和解を最終承認しています。1作品あたりの支払いは約3,000ドルとされ、対象は2025年8月25日までの過去の取得・複製に関する請求で、AIの出力に関する請求や将来の行為は含まれません(Authors Guild 2026年7月21日)。

Kadrey対Meta|原告の立証不足でMetaが勝訴

同じく作家らがMetaを訴えた事件では、2025年6月25日、Chhabria判事がMetaの学習をフェアユースと認めました。ただしこれは、原告が市場への悪影響(AIの出力が書籍の需要を奪うこと)について十分な証拠を出さなかったことによるもので、判断は原告となった作家個人に限られます(Goodwin解説)。別の事件で証拠がそろえば結論が変わりうることが判決自体で示唆されています。

Thomson Reuters対Ross|生成AIではないAIで、控訴審が「フェアユースではない」

法律情報サービスWestlawの要約文(ヘッドノート)を、競合のAI検索サービスの開発に使った事件です。2025年2月にデラウェア地区連邦地裁がフェアユースを否定し、2026年9月29日には第3巡回区控訴裁判所がこれを支持したと報じられています(LawNext 2026年9月)。AIの学習とフェアユースについての初の連邦控訴審判断とされますが、対象は生成AIではなく、競合サービスを作るための利用だった点で、生成AIの事件とは事情が異なります。

Thaler対Perlmutter|AIだけが作ったものに著作権は認められない

AIが自律的に生成した画像について、AIを著作者として著作権登録を求めた事件です。米国著作権局が登録を拒絶し、2025年3月にコロンビア特別区巡回区控訴裁判所も、著作権法上の著作者は人間である必要があるとして拒絶を支持しました。2026年3月2日、連邦最高裁は上告を受理せず(SCOTUSblog)、この判断が確定しています。人がAIを道具として使った場合の扱いは別の問題で、AI生成物に著作権は発生するかの解説記事で詳しく整理しています。

米国|出力をめぐる大型訴訟は係争中.

New York Times対OpenAI・Microsoft

2023年12月、New York Timesが、記事を無断で学習に使われ、ChatGPTなどが記事に近い文章を出力しているとして、OpenAIとMicrosoftをニューヨーク南部地区連邦地裁に提訴しました。2025年4月には、被告側の訴え却下の申立ての多くが退けられ(Thurrott)、他の報道機関や作家の訴訟とあわせて同じ判事のもとで審理が進んでいます。2026年6月には、同紙がOpenAIへの一部請求を取り下げ、Microsoftの責任追及を強める形で修正した訴状を提出したと報じられています(Bloomberg Law 2026年6月)。2026年10月時点で判決は出ていません。学習だけでなく出力が記事を再現しているかが争点に含まれる点で、企業の利用者にも関係の深い訴訟です。

Getty Images対Stability AI(米国)、Disneyら対Midjourney

Getty Imagesは米国でもStability AIを訴えており、2025年8月にデラウェアの訴訟を取り下げてカリフォルニア北部地区で提訴し直しています(Bloomberg Law)。また2025年6月には、DisneyとUniversalが、自社キャラクターを無断で学習・生成しているとして画像生成AIのMidjourneyを提訴しました(NBC News)。いずれも2026年10月時点で判決は確認できていません。キャラクターの扱いはAIキャラクターと著作権も参考になります。

英国・ドイツ|欧州では結論が分かれた.

Getty Images対Stability AI(英国高等法院、2025年11月4日)

Getty Imagesが、自社の画像を無断で学習に使われたとして画像生成AI「Stable Diffusion」の開発元を訴えた事件で、英国高等法院(Joanna Smith判事)が判決を出しました(英国司法府 判決ページ)。Gettyは審理の途中で、学習行為そのものについての主張を取り下げており、判断の中心は学習済みモデルを英国に持ち込んだことが「侵害複製物」の輸入などにあたるかという点でした。判決は、電子的な形のものも侵害複製物になりうるとしつつ、Stable Diffusionのモデルの重みは学習データの画像を保存していないため侵害複製物にあたらないとして、この請求を退けました。一方、生成画像にGettyの透かしに似た表示が出た点については、限定的な商標権侵害が認められています。

その後、Gettyはこの「侵害複製物」の解釈について控訴の許可を得ており、控訴院での審理が予定されています(Simmons & Simmons 2026年1月)。2026年10月時点で、控訴審の判断は確認できていません。

GEMA対OpenAI(ミュンヘン地方裁判所、2025年11月11日)

ドイツの音楽著作権管理団体GEMAが、ChatGPTが歌詞をそのまま出力するとしてOpenAIを訴えた事件です。ミュンヘン地裁は、モデルが歌詞を記憶しており、それを再現することは複製にあたるとし、テキスト・データマイニング(情報解析)の例外では正当化されないとして、GEMAの請求の大部分を認めました(Bird & Bird解説)。第一審の判断で、確定していません。

英国の判決が「モデルは画像を保存していない」としたのに対し、ドイツの判決は「モデルは歌詞を記憶している」と判断しており、モデルの中に著作物が残っているかの評価が分かれた形です。もっとも、画像と歌詞という対象の違いや、各国の法律の違いがあるため、単純に比べることはできません(編集部の見立て)。

裁判で争われている4つの論点。学習・出力・モデル・生成物で問われる行為が違う
裁判で争われている4つの論点。学習・出力・モデル・生成物で問われる行為が違う

国内|新聞社の提訴と、捜査機関の判断.

国内では、2026年10月時点で、生成AIと著作権の関係について裁判所が正面から判断を示した判決は、編集部が確認した範囲では見当たりません。そのうえで、次の動きが報じられています。

時期当事者内容状況
2025年8月7日読売新聞東京・大阪・西部の3本社 → 米Perplexity記事の無断利用について、差止めと約21億6,800万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴2026年5月26日に第1回口頭弁論。被告は請求の棄却を求めた(係争中)
2025年8月26日日本経済新聞社・朝日新聞社 → 米Perplexity記事の無断複製・表示について、差止めと各社22億円(計44億円)の損害賠償を求めて東京地裁に提訴係争中
2025年11月20日千葉県警生成AIで作られた画像を無断で複製し書籍の表紙に使った疑いで男性を書類送検捜査機関の判断。起訴・判決は未確認
2025年12月共同通信・産経新聞・毎日新聞 → 米Perplexity記事の無断利用に抗議抗議であり、提訴ではない

新聞社対Perplexity|検索・要約型AIが問われている

読売新聞の訴訟について、報道によれば、読売側は回答の生成にネット記事や画像を無断で使われたとして、複製権と公衆送信権の侵害を主張しています。第1回口頭弁論では、Perplexity側が請求原因が特定されていないことや、日本に国際裁判管轄(どの国の裁判所で裁判できるか)がないことなどを理由に棄却を求めたとされます(秋田魁新報・共同通信配信 2026年5月26日)。日経・朝日の訴訟では、両社がrobots.txt(ウェブサイトがクローラに対して収集の可否を示すファイル)で利用拒否の意思を示していたのに情報が取得されたと主張し、引用元として社名を示しながら事実と異なる内容を表示したとして不正競争防止法違反も主張しています(Impress Watch 2025年8月26日)。共同通信・産経・毎日の3社も抗議したと報じられています(秋田魁新報・共同通信配信)。

これらは、学習済みモデルの開発というより、検索結果を取り込んで回答を作る仕組み(RAG:検索拡張生成)の扱いが問われている点が特徴です。RAGと著作権の関係はAI学習データと著作権の解説記事で整理しています。

千葉県警の書類送検|AI生成画像を「著作物」と判断

2025年11月20日、千葉県警は、生成AIで制作された画像を無断で複製し、販売した書籍の表紙に使ったとして、著作権法違反の疑いで男性を書類送検しました。県警は、画像が生成AIに具体的な指示を繰り返して制作されたことから著作物にあたると判断したとされ、AI生成画像の著作権を理由とする摘発は全国初とみられています(共同通信配信・熊本日日新聞 2025年11月20日)。ただし、これは捜査機関の判断であり、裁判所が著作物性を認めたものではありません。その後の処分や判決は、2026年10月時点で編集部は確認できていません。

報道された金額の多くは和解額や請求額。判決で認められた額ではない点に注意
報道された金額の多くは和解額や請求額。判決で認められた額ではない点に注意

論点別に読む|企業の実務に何を持ち帰るか.

ここまでの裁判を、企業の担当者の目線で論点ごとに整理し直すと、次のようになります。

論点海外の動き国内の整理(「考え方」)企業が持ち帰ること
学習の適法性米国はフェアユースで判断が分かれ、入手方法(海賊版)が別に問われた30条の4により原則として許諾不要。享受目的の併存などは例外自社でAIを作る・追加学習する場合は、素材の入手経路と権利を記録する
出力の侵害ドイツで歌詞の再現を侵害と判断。NYTの訴訟は係争中通常の著作物と同じく類似性と依拠性で判断公開前の類似チェックと、固有名詞・他者作品を入力しないルール
モデルの位置づけ英国はモデルを侵害複製物と認めず、控訴へ類似物を高確率で生成するモデルは廃棄請求の対象になりうるとの整理もある出所の分からない追加学習モデルを業務で使わない
生成物の著作物性米国はAI単独の生成物を保護しないことが確定創作意図と創作的寄与があれば著作物になりうる人が手を加えた工程と記録を残し、契約で権利を定める

出力の侵害で問われる「依拠性」は、生成AIでは学習データとの関係で特有の考え方があります。詳しくは生成AIの依拠性と著作権侵害の解説記事をご覧ください。侵害が認められた場合の損害賠償の考え方は生成AIの著作権侵害と損害賠償で整理しています。

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海外の大型訴訟は、AI事業者(開発・提供側)が被告になっているものがほとんどです。ただし、出力の侵害は利用者の責任が問われうる場面でもあります。「事業者の問題だから自社は関係ない」と考えず、利用者としてできる確認を続けることが大切です。

よくある質問.

Q日本に生成AIと著作権の「判例」はありますか?
A2026年10月時点で、生成AIと著作権の関係を正面から判断した最高裁判例や下級審の判決は、編集部が確認した範囲では見当たりません。新聞社によるPerplexityへの訴訟は東京地裁で係争中で、千葉県警の書類送検は捜査機関の判断にとどまります。国内の判断の目安は、文化審議会の「AIと著作権に関する考え方について」です。
Q米国でフェアユースが認められたなら、AIの学習は安全と考えてよいですか?
Aそうとは言えません。Anthropicの事件でも海賊版の保持はフェアユースにあたらないとされ、Metaの事件は原告の立証不足による判断でした。そもそも日本では米国のフェアユースではなく、著作権法30条の4で判断されます。
QAnthropicの15億ドルの和解は、判決で賠償が命じられたのですか?
Aいいえ。和解は当事者の合意で、裁判所は和解の内容を承認したにとどまります。判決で賠償額が認定されたものではありません。また、和解の対象は過去の書籍の取得・複製に関する請求で、AIの出力に関する請求は含まれていません。
Q英国のGetty判決は、画像生成AIの利用が安全だという意味ですか?
Aそうではありません。判決が判断したのは、英国法上、学習済みモデルそのものが「侵害複製物」にあたるかという限定的な論点です。生成された画像が既存の写真に似ていた場合の責任は別に問われうるうえ、Gettyは控訴の許可を得ています。
Q海外の判決は、日本の企業にも影響しますか?
A日本国内での利用には、原則として日本の著作権法が適用されるため、海外の判決が直接適用されるわけではありません。ただし、海外向けの広告やサービスでは現地の法律が問題になりえます。また、AI事業者の規約や学習データの方針は海外の訴訟を受けて変わることがあるため、利用中のツールの規約は定期的に確認してください。

まとめ|判決は「論点の先取り」として読む.

  • 「判例」と報道される案件には、判決・和解・係争中・捜査機関の判断が混在している。区別して読む
  • 米国では学習のフェアユースをめぐる判断が出はじめたが、入手方法や市場への影響で結論が変わりうる
  • 英国はモデルを侵害複製物と認めず(控訴へ)、ドイツは歌詞の再現を侵害と判断。欧州でも結論が分かれた
  • 国内は判決がなく、新聞社対Perplexityが係争中。千葉県警の書類送検は捜査機関の判断
  • 企業は国内の整理に沿って、出力の類似チェックと記録を固めるのが現実的

国内の制度の流れは生成AIと著作権の法改正・制度整備まとめで時系列に整理しています。

参考にした情報:英国司法府「Getty Images v Stability AI」 / SCOTUSblog「Thaler v. Perlmutter」 / Authors Guild(2026年7月21日) / Impress Watch(2025年8月26日) / 秋田魁新報(2026年5月26日) / 文化審議会著作権分科会法制度小委員会「AIと著作権に関する考え方について」

※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年10月時点の情報です。

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