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事例

業種別の生成AI活用事例10選|広告・販促の実例と学び

2026.11.03
SAC(Smart AI Collective)編集部READ 11 MIN2026.11.03

この記事の要約

小売・食品・化粧品・アパレル・自動車・金融・自治体の公表事例10件を、用途・成果・学びで整理。業種ごとの向き不向きも表にしました。

「生成AIを広告に使いたいが、自社の業種で本当に使えるのか分からない」。そんな相談が、業種を問わず増えています。実際の公表事例を並べてみると、成功しているケースと撤回に追い込まれたケースの差は、使ったツールよりも「何に使ったか」と「どこで人が確認したか」にあったと考えられます(編集部の見立て)。本記事では、小売・食品・化粧品・アパレル・自動車・金融・自治体の公表済み事例10件を、用途・成果・学べるポイントの3点で整理し、業種ごとの向き不向きを表にまとめました。
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この記事でわかること

  • 業種別に、生成AIを広告・販促クリエイティブに使った公表事例10件
  • 各事例で「何に使ったか」「成果(公表されている範囲)」「学べるポイント」
  • 撤回に至った事例から考える、公開前の確認の大切さ
  • 業種ごとの、生成AIに向いている使い方・慎重にすべき使い方
  • 自社で最初の1案件を選ぶときのチェックポイント
結論

どの業種でも使えますが、向いているのは「世界観づくり」「案出し」「出し分け用の本数確保」です。商品の効能・形状・条件を正確に見せる場面ほど、人の確認と表示の設計が欠かせません。公表事例を見る限り、成否を分けたのは技術よりも運用だったと考えられます(編集部の見立て)。

10事例の一覧と、事例を読むときの視点.

今回取り上げるのは、企業・自治体のプレスリリースや信頼できる報道で内容を確認できた事例だけです。成果の数字は、公表されているものに限って記載しています(「成果非公表」の事例も多く、それ自体が実態です)。

事例を読むときは、次の3点を見ると自社に置き換えやすくなります。

  • 生成AIの役割:完成物を作ったのか、人が仕上げる前の「案」を作ったのか
  • 正確さの要求:商品の形・色・効能・条件を、どこまで正しく見せる必要があったか
  • 人の関与:企画・選定・仕上げ・権利確認のどこを人が持っていたか
業種事例時期生成AIの役割
小売・商業施設パルコ「HAPPY HOLIDAYS」2023年10月グラフィック・映像・ナレーション・音楽
アパレルH&M デジタルツイン2025年7月モデル本人のAI版で広告ビジュアル
食品・飲料伊藤園「お〜いお茶 カテキン緑茶」2023年8月発表パッケージデザインの参考画像
食品・飲料ハインツ「A.I. Ketchup」2022年7月SNS企画の画像生成
化粧品・美容ロレアル「CREAITECH」2024年5月社内のコンテンツ制作ラボ
化粧品・美容ウテナ「潤い戦士 モイスチャー」2026年4〜5月AIアニメ広告(後に撤回)
自動車BMW iX3 のCM2026年4月(報道)30秒CMの全カット
金融三菱UFJ銀行「バンクイック」2026年5月発表利用シーン別の複数動画
自治体・観光奈良県・天川村の観光動画2025年5月観光プロモーション動画
自治体富山市「やまやま」「くすくす」2026年5月(紹介記事)キャラクター案の大量生成
公表事例を時系列に並べると、話題づくりから実務への移行が見える
公表事例を時系列に並べると、話題づくりから実務への移行が見える

小売・アパレル|「撮影」をどこまで置き換えるか.

事例1|パルコ「HAPPY HOLIDAYSキャンペーン」(小売・商業施設)

  • 何に使ったか:実在モデルの撮影を行わず、人物から背景までをプロンプトで生成したファッション広告。グラフィック・ムービーに加え、ナレーションと音楽も生成AIで制作し、店頭のクリスマス装飾のモチーフにも使いました。ナレーションは社員を含む複数の女性の声をサンプリングしたと説明されています。
  • 成果:数値の成果は公表されていません。全国のPARCO(一部店舗を除く)で展開されました。
  • 学べるポイント:「一目でAIと分かる絵」ではなく、撮影したかのような質感とアート性を狙うと明言し、海外のAIクリエイターを起用しています。商品を正確に見せる必要が薄い「季節の世界観」は、生成AIが最も力を発揮しやすい領域です。

出典:パルコ プレスリリース(2023年10月30日)

事例2|H&M「デジタルツイン」(アパレル)

  • 何に使ったか:実在のモデル本人をもとにしたAIの「デジタルツイン」を使い、ビジュアルを世界の都市風景を背景に展開しました。2025年7月2日に最初の画像が公開されています。
  • 成果:数値の成果は公表されていません。報道によれば、モデル本人が肖像の権利を保持し、収益の分配を受ける仕組みで、AI生成であることも表示されています。
  • 学べるポイント:論点は技術ではなく本人の同意・対価・表示です。モデルを起用する業種では、この3点を契約で先に決めることが前提になります。AIモデルの事例はAIモデル・AIタレントの広告事例で詳しく扱っています。

出典:FashionUnited(2025年7月4日)

なお、EC事業者の商品画像への活用は、景品表示法との関係も含めてECの商品画像にAIを使う事例で整理しています。

食品・飲料・化粧品|消費財は「効能」と「似すぎ」に注意.

事例3|伊藤園「お〜いお茶 カテキン緑茶」パッケージ(食品・飲料)

  • 何に使ったか:プラグ社の商品デザイン用画像生成AIのパイロット版で案を出し、その画像を参考にデザイナーがイラストとデザインを作り直しました。2023年8月28日に発表し、9月4日に発売しています。
  • 成果:数値の成果は公表されていません。
  • 学べるポイント:生成AIは完成品ではなく「参考画像」の位置づけで、最終デザインは人が作っています。パッケージのように長く店頭に並び、商標や表示の確認が必要なものほど、この分担が現実的です。同社はAIタレントを起用したCMでも話題になりました(AIモデルの広告事例参照)。

出典:伊藤園 ニュースリリース(2023年8月28日)

事例4|ハインツ「A.I. Ketchup」(食品)

  • 何に使ったか:ブランド名を入れずに「ケチャップ」系のプロンプトを画像生成AI(DALL·E 2)に与え、出てくる画像がハインツのボトルに似ることをSNSで発信しました。人に「ケチャップを描いて」と頼んだ過去の企画の続編です。
  • 成果:広告業界の調査機関WARCによれば、11億5,000万回超のアーンドインプレッション(広告費を払わずに得た露出)を獲得しました。
  • 学べるポイント:生成AIを制作の道具ではなく「企画のネタ」にした例です。AIの出力そのものが、ブランドの強さを示す証拠になっています。

出典:Muse by Clio(2022年7月29日) / WARC

事例5|ロレアル「CREAITECH」(化粧品・美容)

  • 何に使ったか:社内に生成AIのコンテンツ制作ラボを設け、37ブランドでブランドの決まりに沿ったローカライズ素材を効率よく作る体制を整えました。2024年5月の発表では、8か月で20以上の生成AI技術を試し、1,000点超の画像を作成したとしています。
  • 成果:制作量は上記のとおり公表されていますが、売上などの成果数値は公表されていません。
  • 学べるポイント:注目すべきは使わない領域を先に決めている点です。同社は、商品の効果を示す目的で、AIが生成した実物そっくりの顔・体・髪・肌の画像を対外的に使わない方針を示しています。効能を見せる業種の線引きとして参考になります。

出典:L'Oréal Finance(2024年5月21日)

事例6|ウテナ「潤い戦士 モイスチャー」(化粧品・美容)

  • 何に使ったか:長寿スキンケアブランドの若年層向け施策として、全編AIを活用した変身ヒロイン風のアニメ動画を制作。JR山手線などで交通広告を掲出し、2026年5月1日からYouTubeで公開しました。
  • 成果:既存作品との類似を指摘する声が相次ぎ、同社は5月6日に謝罪を発表。動画と関連SNS投稿を削除し、交通広告も順次撤去すると報じられました。外部専門家の指導を受け、表現のチェック体制を見直す方針です。
  • 学べるポイント:公開後に類似性の指摘を受けると、施策そのものが止まりうることを示した事例です。生成AIで制作時間を縮める場合ほど、公開前の類似性チェックとファン心理への配慮を工程に組み込んでおくことが大切だと考えられます(編集部の見立て)。権利面の考え方はAI動画の著作権リスクも参考にしてください。

出典:AdverTimes(2026年5月1日、5月7日追記)

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事例5と事例6は同じ化粧品・美容業界ですが、結果は対照的です。ロレアルは「AIで描かないもの」を方針として先に示し、ウテナは公開後の指摘を受けて謝罪し、チェック体制を見直す方針を示しました。公表情報を並べると、描かないもの・公開前に確認することを先に決めておくかどうかという違いがあったと考えられます(編集部の見立て)。

自動車・金融|「正確さ」と「信頼」をどう守るか.

事例7|BMW iX3 のCM(自動車・メーカー)

  • 何に使ったか:報道によれば、30秒のCMの全カットを生成AIで制作し、カメラ・セット・撮影クルーを使いませんでした。航続距離の長さを、運転中にひげが伸びる演出で表現しています。
  • 成果:数値の成果は公表されていません。報道では、カット間の一貫性と製品の正確な再現がまだ課題だと指摘されています。
  • 学べるポイント:自動車のように形状や仕様が厳密な商品では、背景や演出は生成しやすい一方、製品そのものの再現は難所です。コスト削減ではなく「制作プロセスの検証」と位置づけた点も示唆的です。

出典:BMWBLOG(2026年4月30日)

事例8|三菱UFJ銀行 カードローン「バンクイック」(金融)

  • 何に使ったか:資金ニーズが生まれるさまざまな場面に着目し、Googleの生成AI(Nano Banana、Veo 3)などを使ってシーン別に複数の動画を制作。視聴者の興味・関心に応じてメッセージを出し分けました。
  • 成果:YouTube Works Awards Japan 2026「Best Use of Google AI」部門のファイナリストに選出されたと発表しています。同行は、カードローンへの心理的ハードルの軽減に貢献したと考えているとしています(具体的な数値は非公表)。
  • 学べるポイント:生成AIの強みを「1本の大作」ではなく出し分けのための本数に使った好例です。金利や条件など誤解が許されない情報は、映像の外(テキストや遷移先)で正確に示す設計が前提になります。

出典:三菱UFJ銀行 お知らせ(2026年5月27日)

金融では、沖縄海邦銀行も2023年11月に、映像・BGM・ナレーションのほとんどをAIで生成した企業CM3本を公開しています(PR TIMES掲載のリリース)。商品広告ではなく企業イメージのCMから始めるのは、規制の厳しい業種の入り方として参考になります。

自治体・観光・不動産|少ない予算で本数とアイデアを増やす.

事例9|奈良県・天川村の観光プロモーション動画(自治体)

  • 何に使ったか:NTT西日本が奈良県・天川村などと協働し、生成AIで観光向けのプロモーション動画を制作。村の公式Instagramで公開しました。
  • 成果:数値の成果は公表されていません。リリースでは、生成AIの活用で制作工数を抑えつつ表現の自由度を高める取り組みだと説明されています。
  • 学べるポイント:プロンプトに既存のキャラクター名を使わないなど、著作権侵害を避ける対策を明記している点が、公的機関らしい進め方です。

出典:NTT西日本 ニュースリリース(2025年5月16日)

事例10|富山市のPRキャラクター「やまやま」「くすくす」(自治体)

  • 何に使ったか:市民ワークショップなどから集めた約1,200のキーワードをもとに、Adobe Fireflyで約2,500のキャラクター案を生成。アニメ作家が対話しながら絞り込み、最終的な選定と仕上げを担いました。
  • 成果:数値の成果は公表されていません。
  • 学べるポイント:事業者公募の仕様書に「著作権的に問題のないツールの使用」「依拠性・類似性への配慮」「プロのクリエイターの参加」を条件として書き込んだ点が最大の学びです。発注側がAIの使い方を指定する、という実務の型になっています。

出典:Adobe Blog(2026年5月26日)

不動産業界の活用(イメージ家具の配置や外観の加工など)は、広告表示ルールとの関係が特に重要なため、不動産広告のAI活用事例で別途詳しく解説しています。

10事例を「完成物への近さ」と「表現の自由度」の2軸で分けた
10事例を「完成物への近さ」と「表現の自由度」の2軸で分けた

業種別の向き不向きと、最初の1案件の選び方.

10事例を並べると、業種による差は「生成AIが使えるかどうか」ではなく、商品そのものを正確に見せる必要がどれだけあるかで生まれていると考えられます(編集部の見立て)。

業種別の向いている使い方・慎重にすべき使い方(編集部の整理)
業種別の向いている使い方・慎重にすべき使い方(編集部の整理)

事例から見える3つの運用(編集部の整理)

  • 描かないものを決める:ロレアルの「効果を示す人物画像は使わない」のように、禁止領域を先に明文化する
  • 人が仕上げる工程を残す:伊藤園・富山市のように、AIは案出し、完成は人という分担にする
  • 公開前に類似性と表示を確認する:公開後に謝罪し、チェック体制の見直しを表明したウテナの事例からは、この工程の重要性が読み取れる

表示や広告規制の全体像は生成AIを広告に使うときの注意点にまとめています。

最初の1案件を選ぶときのチェック

Checklist
  • 商品の形・色・効能・条件を正確に見せる必要が少ない用途か(世界観、季節施策、イメージ映像など)
  • 生成AIの役割を「完成物」か「案出し」かで決め、人が仕上げる工程を残しているか
  • 実在の人物・既存作品・他社キャラクターに似せる指示をプロンプトに入れていないか
  • モデルや声を使う場合、本人の同意・対価・表示を契約で決めているか
  • 公開前に類似性チェックと、ファンやコミュニティの受け止め方の確認をしたか
  • AI生成であることの表示方針を、媒体のルールとあわせて決めているか
  • 成果を何で測るか(制作本数、工数、反応率など)を事前に決めているか

よくある質問.

Q規制の厳しい業種(金融・医薬品・化粧品など)でも生成AIは使えますか?
A使えます。ただし、効能や条件など誤解が許されない情報は、生成した映像や画像に語らせないのが原則です。三菱UFJ銀行のように利用シーンの描写に使う、沖縄海邦銀行のように企業イメージCMから始める、といった入り方が現実的です。
Q事例の成果数字が少ないのはなぜですか?
A多くの企業が、生成AIを使った施策の売上や反応率を公表していないためです。本記事では、公表されている数字だけを載せています。社内で検討する際は、制作本数や工数など、自社で測れる指標を事前に決めておくことをおすすめします。
Q生成AIを使ったことは、広告で表示しないといけませんか?
A広告全般にAI生成の表示を一律で義務づける国内法は、編集部では確認できていません(2026年10月時点)。一方で、TikTokやMetaなどの広告プラットフォームは、AI生成コンテンツの表示ルールを設けています。H&Mのように自主的に表示する企業もあります。媒体ごとのルールは<a href="https://sac.epoch-inc.jp/magazine/articles/sns-ad-video-ai/">SNS広告動画をAIで作る方法</a>で解説しています。
Q炎上を避けるために、最低限やるべきことは何ですか?
Aプロンプトに実在の作品名・キャラクター名・人物名を入れないこと、公開前に既存作品との類似を人の目で確認すること、生成ログを残すことの3つです。富山市のように、外注時は仕様書にAIの使い方を書き込むのも有効です。
Q中小企業や自治体でも取り組めますか?
A取り組めます。天川村や富山市の事例は、予算や人手が限られる組織こそ、本数やアイデアの幅を広げる用途で効果を出しやすいことを示しています。最初は1案件に絞り、社内ルールと確認手順を作ってから広げてください。

まとめ|事例から見えるのは「技術」より「運用」の重み.

  • 生成AIは業種を問わず使われているが、得意なのは世界観づくり・案出し・出し分けの本数確保
  • 商品の形状・効能・条件を正確に見せる場面ほど、人の仕上げと表示の設計が必要になる
  • モデルや声を使うなら、本人の同意・対価・表示を契約で先に決める
  • 撤回に至った事例からは、公開前の類似性チェックの重要性が読み取れる(編集部の見立て)
  • 外注するなら、富山市のように仕様書でAIの使い方を指定するのが実務の型

生成AIの基本的な考え方はAIクリエイティブとはもあわせてご覧ください。

※ 本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別の案件については弁護士等の専門家にご確認ください。記載は2026年10月時点の情報です。

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